異世界SDロボ〜葡萄月の継承者達〜 宇宙からやって来たカナヴン -------------------------------------------------------------------------------- 「カナヴン」と呼ばれる未知の機械を御存知だろうか?  宇宙世紀1890年頃に何の前触れもなく外宇宙から飛来し、蘇芳国領の資源コロニー “くぬぎ”に激突し直径90kmに及ぶ大穴を開けている。  その時の衝撃は凄まじく、数千人に及ぶ労働者が負傷している。しかし、死者が1人も 出なかったのは不幸中の幸いであったと言えよう。機械自体もぶつかる遙か以前に機能を 停止していたことから、事態はそれ以上悪化せずに収束していった。  後の調査で判明したことだが、カナヴンの装甲自体には衝突の際にできたと思われる傷 は皆無であった。もし僅かでも稼働できる状態であったならば、現場の様相もまた違って いただろうし、事態の収束もとんとん拍子には行かなかっただろう。  現代の技術を持ってしてもこの傷つかない外装を造ることは不可能である。ましてや直 径90kmの大穴が開くような衝撃に耐えうる素材や技術など皆無に等しい。  人類のどの技術系統にも属さない技術によって造られたであろうカナヴンは、およそ1 20年経った現在でも世界中の専門家たちが解析を続けている。それでも5割程度しか解 析できていない処にこの機械の難解さが見てとれる。  内部の解析はほぼ終了しているが、外装と武器類については殆ど手つかずと言っていい 状況である。  特に外装については先述の頑強さもそうだが、宇宙空間では艶のない紫色だったものが コロニー内で酸素に触れた瞬間に変色して金属光沢を放つ緑色になっている。このような 人類とは一線を画す技術がどのような役割を担っているのか、学者はもちろん技術者たち も皆目見当がつかないらしい。  逆に武器の方は、テクノロジーまでは分からなくともおおよその見当はついているよう だ。カナヴンに搭載されていたのは、一種の集束プラズマ砲であり、理論上その威力は大 型で強力とされる戦艦ビーム主砲の512倍とも1024倍とも言われている。  このように未知の技術の集合体ともいえるカナヴンだが、解明できた部分は新技術とし て科学や工業、軍事の分野に取り込まれている。蘇芳国の機械人や戦艦も例外ではなく、 設計思想や技術の飛躍に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。  辺境のコロニー国家であり、資源も乏しく技術的にも立ち遅れていた蘇芳国が今こうし て列強たちと肩を並べていられのもカナヴンよりもたらされた技術の恩恵に他ならない。 了