「お母さまー! お姉さまー! こっちこっちー!!」 「キャリコ待ちなさい!」 無人島。というには随分と整備されたここはディオール王族のために買われた元未開の島。 虫と鳥だけが跋扈し緑一色で外敵となる獣がいないこの島の浜辺付近を開発 避暑地として利用している。今回の物語はこの島から始まる。 「二人とも待って!日焼け止めがまだですよ!」 「元気なのはいい事よアリシア、お母様とっても嬉しいわ」 その幼い可愛らしさを際立たせるはしゃぎ様で浜辺を走る金髪の少女、ディオール第三王女エヴァック=キャリコ=ディオール 身に着けているのはいつものドレスではなく、その面影を残すピンク色のワンピース 一見するとディオールのドレスに似ているだけだが背中は殆ど紐であり かなり際どいデザインになっている。だがそのデザイン故に白い肌が太陽の光を心地よく受けている。 その後を追うツインテールの少女は姉の第二王女エヴァック=キャスカ=ディオール キャリコよりも年上だが少女らしさの残るその姿は、キャリコの愛らしさを際立たせる活発さとは違う お転婆娘を思わせる元気にあふれた物だ。こちらはフリルを多様したデザインに 胸の谷間に位置するストラップはリボンになっている。 キャスカは少々胸囲が無いのでワンピースよりも、ビキニのほうが良いようだ。 ローレグ気味でヒップが軽く露出し、黒が色気を醸し出す…かもしれない 「きゃっ!?」 「あぁキャスカお姉さま大丈夫ですか!」 「キャスカ怪我はない!?」 慣れないサンダルで走ったせいか、砂に足が取られて転んでしまったキャスカに 驚いて駆け寄るひざ裏あたりまである編まれた髪が特徴的な二人とは違った 少女と女性の中間的な雰囲気をした彼女は第一王女エヴァック=アリシア=ディオール 温和で物静かだが暗いわけではなく、年相応の態度でワクワクとした心を抑えているようだ 彼女の水着は白いビキニ、ボトムとトップがつながったタイプで背中の腰あたりでクロスして ボトムの脇のリボンに結ばれている。白いカラーが清楚さを押し出すが アリシアの女性的な魅力に溢れるボディラインが、逆に処女雪のような怪我されてない色気を醸し出す 「あらあら、キャスカ怪我はない? せっかくサイゾウ君達がいるのに怪我をしたら損よ?」 「お、お母様!」 そして第二王女の恋人の名を出し微笑む、聖母のような慈愛に溢れた彼女らの母、現ディオール女王のエヴァック=テレサ=ディオール 三児の母と思えぬそのあまりにも魅惑的な身体を包む白いビキニは、そしてそのシルエットを大胆に浮かばせる それぞれ、ドレスに使われる宝石をアクセサリとして身にしキャリコはアームカバー キャスカはシュシュにアリシアはアームレット、テレサはアンクレットとして着け 母娘それぞれが魅力的だが、その姿を見る事ができるのは残念ながらこの島の鳥達と 後ろで大量の荷物を持ち、王族を後ろから見る二つの人影だけだった 「暑ぃ…キャスカは何してんだよ」 「持つか?」 「いやいい、そっちも手一杯だろ?」 眼帯をした緑髪の少年、カニ・サイゾウが額の汗を拭う。その両腕にはクーラーボックスとレジャーシートなどが入ったバッグ クーラーボックスを抱える右手は、かなりの重量を支えているはずの腕の動きが軽い この事からかなりの身体能力だと分かる。 彼は東洋の孤島バクフ国の戦士であり、ぶっきらぼうではあるが根は正義漢 キャスカと共に旅をして、ぶつかり合いながら惹かれあい恋をした 今でもお互いに喧嘩こそするが、喧嘩するほど仲がいいという。 水着は赤い短パンのようで、ポケットが大量についている。どうやらここに軽い暗器を隠しているようだ もう一人はヒース、青い長髪が美しい美青年…とだけ言うには出来すぎた姿をしている。 彼は記憶喪失のロボット。目の下に走る涙腺のタトゥーとも取れる線はその証なのだろう 恐るべき力を秘め一度は迫害されたが、誤解が解け記憶探しの旅の中でアリシアと出会い 共に旅をする間に互いを意識し、結ばれて現在に至る。 ロボットのパワーは荷物持ちに便利だったようでパラソル付きのテーブルとイスを持っていた こちらの水着はエリカが描かれたサーファーパンツ、アリシアとおそろいではないがアームレットを着けている 「ヒースさんサイゾウさん! はやくはやく〜!」 「あらあらキャリコ、お兄様を困らせてはダメですよ?」 「だってよ? どうする兄上?」 「その呼び方は恥ずかしいが、急ごうか弟…バクフなら弟者でいいのか?」 首をかしげたヒースに「それでいいんじゃねーか?」とサイゾウが走り出し追いかけるようにヒースも駆けていく こうして砂浜にはパラソルが4本、1本はリクライニングチェアへの太陽を遮る。 一つはテーブルに残りはシートへの日を遮る。その近くには大型のクーラーボックス すっかりと大衆的な納涼となったが、キャリコは新鮮な気分のため逆に喜んでさえいる 「皆、ちゃんと日焼け止めは塗るようにキャリコはお母さまが塗りますよ」 「はーい!」 「じゃあ私はお姉様に」 「アリシアとキャスカはヒースさんとサイゾウ君に塗ってもらいなさい」 一応、日焼けを避けるべきとの事で日焼け止めを塗るのだが、テレサの言葉にアリシアとキャスカ以上に ヒースとサイゾウがビックリしたような顔をする。恋人とはいえまさかオイルを塗ることになるとは思ってなかったのだろうか? もちろん、アリシアも驚いて何を考えたか手を頬に当てて赤らめ、キャスカは母親にダダをこねるように抗議する 「お母様! サイゾウに任せるなんてそんな」 「恋人にそれぐらい任せてあげなさい。お母様なんてそんな事できなかったんですから」 「し、仕方がないわねサイゾウ! 塗り残しがないように」 「ヒース! 後生だ交換してくれ!」 当時の女王やマリーの母は二人の恋を良く思わず、マルローネを社会的に抹殺しようとしたこともあり 二人はこのような事は出来なかったせいか押し売り的な無茶を言う母に 本当にいイヤなわけではない。素直になれないキャスカが理由を得たと堂々としようとしたが、サイゾウの一言で怒りに変わり 召還した天使型の魔道ロボ「アンジェラ」による一撃、アンジェラアタックが炸裂してサイゾウが海に吹き飛んだ サイゾウもサイゾウなりの照れ隠しをしたのだが、乙女心とは複雑なのである。 そして当のヒースとアリシアはどうしているかというと 「………は、恥ずかしいな」 「あ、あの優しく…あっ」 微笑ましいというか、初々しいというか。少々ストラップを外すのに苦戦しながらもリボンを解き その雪のような儚さの白い柔肌に手を伸ばしていた。 泳いでも落ちず効果的面なこのオイル、暗黒帝国から取り寄せた王族御用達の品 レヴィア=スペリオスの美しい美肌をしっかりとガードし、夏のバカンスでも あの陶磁器のような美しい肌を保った効果は本物である 「きゃっ!?」 「すまない!? もうやめたほうが」 「や、やめちゃイヤ…です」 オイルで手がすべり、うつ伏せてつぶれていたアリシアの胸に手が付くとまた初々しい反応で お互いにドキドキとしているのが、周りから分かる赤さになっている それを尻目に、サイゾウは戻ってきてもムスっとしている。いつもの事なので怒ってはいない だがこのままでは癪なので仕返しを目論んでいるようだ。流石にやりすぎたと 反省しているようなキャスカがパラソルの下で待っているが 「やりすぎたわ、ごめん…さっさと塗って!」 「ん? おいおいそりゃないだろ?」 「な、何よ! 根に持って」 「塗ってくださいだな。」 ニッと意地悪く笑ったサイゾウに、キャスカが何でそうなるとブーイングをするのだが 自分では範囲に限界があるし塗られないと母親にも何か言われるだろう 日焼けしてヒリヒリするのも海を楽しめないのはいやだと しかたがないと諦めながらも、ぐぬぬと悔しそうに 「うっ…ぬ、塗って…あぁもう! 塗ってください! どうせ塗ってじゃダメなんでしょ!」 「よく分かったな、けどよ心が篭ってない! なんていうと殴られそうだしな、解いて寝ろ」 「ちょっ私が脱ぐの!? あっち向いてて!」 へいへい、とサイゾウが後ろを向きキャスカも無事に塗られるだろうと安心すると テレサはキャリコへのオイルを塗り終えようとしていた。ワンピースだが 背中は殆ど紐のようなもの。解いてしまえば簡単に塗れてしまう その変わりヒップまで露出しているため、塗る範囲は広いのだが 「お母さま、ちょっとくすぐったいです」 「我慢しなさい、塗らないとヒリヒリするんですから」 「はーい…お母さまは塗らないの?」 「後でお父さまに塗ってもらうから大丈夫よ」 テカテカと肌をオイルで艶やかせたキャリコが、緩くないか確認しながら 母に納得すると、準備は終わったと海へと駆け出していく 軽い水しぶきを上げて海の中に飛び込むと、母親のほうに手を振って泳ぎ始める 比較的に浅い場所だが、まだ小さなキャリコにはそれでも十分すぎた 「サイゾウ! どこ触ってんのよスケベ!」 「ならもう少しせーそな水着選べよ!」 キャリコが泳いでるのと反対に、サイゾウとキャスカの争う声が聞こえてくる 内容は聞こえてくる声で大体分かりテレサがアラアラと、困ったように二人を見る キャスカのビキニのボトムもローレグ気味なせいでオイルを塗る範囲が広いようだ 「お、お尻がヌルヌルして変…」 「そっちは自分でやれよ? ここじゃなんだし…」 「ヒースさんくすぐったいっ」 「すまない、けどもう少しだ」 ヒースとアリシアに関しては、背中は終わったようだが塗ってもらえの意味を勘違いして 背中だけでなく、アリシアの体中にヒースがオイルを塗っていた 臍の辺りに塗っていたようだが、手つきはやらしくはなく ぎこちなく肌にツヤを与えゴクリと太ももに手をやろうとしている 「ちょっとやりすぎちゃったかしら…?」 少し色のある会話に、キャリコが泳ぎに行ってよかったと思ってしまったようだ そうこうしている間にキャスカもオイルを塗り終わり、やはり尻のあたりを気にしているのか 尻を見るように身体を捻り、水着を軽く引っ張ってキュッと谷間を引き締めた。 だが気にしてても楽しめないと諦め、海のほうに走り出す 素直じゃねーなと横になるサイゾウだが、悪い顔はしていない 「あ、ありがとうございました。もう大丈夫です」 「すまなかったな、少し失敗した」 「そんな事無いです! わ、私はまだこっちで少し休んでます」 アリシアも塗り終わったらしく、ツヤツヤと光を返す肌は余計に色気を漂わせる それに対して、気恥ずかしそうにヒースがアリシアのそばで足を伸ばして自分を誤魔化すようにしている 二人とももう少し近づきたいようだが、家族が近いせいか暑いなど自分に言い訳をしている 慎ましいが、もう少し積極的なほうがいいのにと言い訳にされた母親は、ため息混じりに微笑んでいた 「………マリー、早く来ないかしら」 少し遅れてやってくる、夫の愛称を呟きながらテレサは女王から少しだけ女性に戻った 娘二人と恋人のやり取りを見て、恋しくなったのか寂しそうに リクライニングチェアを倒し、パラソルで太陽から隠れ向日葵のついた麦藁帽子を深く被り 愛しい人を待つ姿は女王でも母でもなく、恋人のそれを思わせた。 「キャスカお姉さまそっち!」 「キャリコ高いわ!」 それから30分ほど経つと、キャスカとキャリコは簡単なボール遊びを楽しんでいた。 久方ぶりの家族との海を満喫する二人、変わらない妹の無邪気さに アリシアがふと微笑んで見ていると、キャリコがコントロールを失敗し 「アリシアお姉さま〜そっちに行きました!」 「えっちょっと待ってください! きゃあっ!」 驚いたアリシアが何とかトスでボールをキャリコのほうに返そうとしたが 微妙なタイミングで間に合わず、ムリに返そうと飛び込んだため 砂浜に飛び込むような形で滑り込み。ふよふよとボールがキャリコのほうに返っていくが 「アリシアお姉さま大丈夫ですか!?」 「な、なんとか・・・」 起き上がり、腹や胸に付いた砂を軽く払うと、水着の皮を纏った豊満な白いアリシアの果実が ぷるぷると小気味良く揺れ、サイゾウあたりがいれば目を奪われるはずなのだが サイゾウとヒースは今はここにはいない。逆に目を奪われたのはキャリコだった 「キャスカお姉さま」 「何?」 「アリシアお姉さま見たいになれるかな?」 ぼーっとその光景を見ていたキャリコが、ストン・ペタンと擬音が出そうなほど小さな胸を触り むぅっと顔をしかめる。それを見ていたキャスカは沈黙してしまう キャスカはキャリコと同じ、いやそれよりも小さい可能性があるほどに胸が無いのだ そうもなるだろうし、悪意こそ無いが自分よりも少し大きそうな妹に言われては 「ど、どうかしら!?」 「キャスカお姉さま?」 「何でもないわ、キャリコは可能性があるんじゃない?」 どこがげっそりとしたキャスカがため息混じりに言うと、キャリコが心配そうにキャスカの顔を窺い 首をかしげる。ワンピースから見える小さいがキャスカよりも大きな胸に キャリコが眩暈を覚えるが、気を取り直そうと再びボールを跳ねた 「ヒースさんたち遅いですね…」 「少し荷物が多すぎたかしら?」 その光景を見て普段なら胸のことを言いそうなサイゾウだが、ヒースと共にここにはいない 二人は今どうしているかというと、島の別荘に一度戻って追加でイルカのフロートなどの遊び道具を探していた 量が多いせいか、どこに何があるか分からず大苦戦している 「そっちにはねーのか?」 「ダメだ、影も無いとはこのことか」 どうやら探すのに大苦戦して戻るのはまだ先のようだ。ヒースがいないせいかアリシアはちょっと寂しそうにして グラスの中のフルーツジュースを飲み干し、青空に似合わないため息をついた その色白さも雰囲気で見方が変わるもので暗い雰囲気を引き立たせる 「アリシアも遊んできたらどう?」 「いえ、私は…」 こんな事なら、もう少しヒースさんに甘えればよかった。そういいかけてやめたアリシアに 何か気づいたのかテレサがリクライニングチェアから起き上がり 横に座るとアリシアの頭を軽く撫でる。親にとって17でもまだ子供なのだろう 「そんな顔しないで、すっきりしなきゃヒースさんが首を傾げてしまいますよ?」 「そうかもしれませんけど私そんなに」 「久しぶりに姉妹で遊んでらっしゃい、ほら!」 テレサがとんっとアリシアを押し出すが、彼女も母親に何かを感じたのだろう 何と手をとって一緒に海へ、これに驚いたテレサだが 「お母様も、お父様がいなくて寂しいんじゃないですか?」 「あら…分かっていたのね」 「お母様も一緒に遊びましょう、確かにすっきりしそうです」 久しぶりの親子水入らずだ母の言うとおり落ち込んでも仕方がないし、母もそれは同じ こうしてディオール王家の母と娘達が揃い、何年ぶりかに一緒に遊ぶことに これにはキャリコが一番喜んだ。姉が城にいない意味ではキャリコが一番それを感じていたからだろう 「はい、ちょうど二チームに分けれますしビーチバレーでも」 ならキャスカお姉さまは私とと、キャリコが腕に抱きつく。身体能力でいえばキャスカが一番高く チームを組むならそのほうが勝ちやすい、アリシアもテレサも身体能力ではキャスカより下だ サイゾウたちが帰るまで4人でビーチバレーを楽しむことになったが 結果はすでに決まっていたようなものだった。十数分もしたら 「お母様! お願いします!」 「まってアリシア! ぁあん!」 飛んでくるボールを返そうと飛び出すが、ボールではなくたわわな胸が揺れるだけで 間に合わずボールが水の上に静かに落ちる 点数的に酷い差が生じていた。アリシア・テレサチームはまだ3点 キャスカ・キャリコチームは14点で10点以上の差があった 「キャスカ行きますよ! えいっ!」 「甘いっ!」 アリシアの必殺の一撃も、ふよふよしたビーチボールでは威力が無くキャスカが軽く空中に弾き 落ちて来るボールを今度はキャスコがテレサめがけて打ち出して、水辺に落ちてまた1点を奪われる 「最近運動不足かしら?」 「そうかもしれませんね」 本気になったが、娘に太刀打ちできず息切れしそうな自分にがっかりとするテレサ この時はアリシアも夢中になっていたし、勝つためにキャスカを真っ先にチームに引き入れた キャリコだってそうだ。何かが近づいているなんて知る由も無し 「っ今何か足元に!? きゃあああああ!?」 「キャスカお姉さひゃあ!?」 最初の犠牲者はキャスカとキャリコだった、あっけないほど簡単に二人の体が宙に浮き上がると 今度はアリシアが連れて行かれる。テレサが驚いたときにはときすでに遅し 足に絡みつくやわらかい何かを解こうとしながら、テレサも宙に連れ去られた 「こ、これは!?」 「クラゲ!? えっタコ!?」 クラゲとタコが合体したような謎の巨大生物だった。8本に収まらない赤い触手をヌラヌラと妖しくうねらせ 一人に5本ほど触手を当てて、何かを探すように弄らせる 突然にことに呆気に取られたテレサたちが気を取り直すと、触手はあるものを取り外し 赤い風船のような身体へと運んでいく。取り外したものとは… 「私のシュシュを食べた!?」 「アンクレットまで…まさかあれは!?」 テレサが生物の正体に心当たりがあるらしく、顔を青ざめる。 こんな得体の知れない生物の正体とは何なのか 「魔力を蓄えるタコ、バルーンポッドオクトパスこんな所で出てくるなんて!」 「暖かい場所っていう条件は分かるけど何で!?」 キャリコがじたばたと暴れようとするが、まったく意に返さず触手がその手足を絡め取ってゆく 身動きが取れなくなると、必死に手を逃がそうとするが片腕はすでに捕まり 必死に足掻く足も太ももの辺りまで絡められると、もはや動かすことが出来ない 粘液でヌルヌルとしているが、するりと抜けるなどという都合の良い結果にはならなかった 「お姉様アンジェラを! 私は身動きが」 「だ、ダメですもう私は…」 後ろ手に腕を拘束され、両足を広げられる形で捕まったキャスカが姉に助けを求めるが それよりも早くアリシアは両腕を頭上で纏められ、両足は別々だがやはり拘束されている アンジェラを召還するにも、パンツァーシュナイダーがないのが致命的だった 「こ、これは…」 テレサがますます青ざめた、娘達よりも早く身体に触手をぬめぬめと巻きつけられ 身動きが取れない現状。抵抗手段が無いのだ。しかも敵のタコの生態を知っているようで それだけは回避したいと必死の抵抗を試みるが腕も足も、まったく言うことを聞かない 「アリシアお姉さま、まさかこのタコ」 「肉食性ではありません、けど…」 バルーンポッドオクトパス。クラゲのような触手を持つがこれは吸盤の退化した変わりに数が多くなった足で 足は粘液で守られているがしなやかで丈夫。それなりの重量もあるがロボットに古くから使う地もある 最大の特徴は身体に魔力を溜め込むことで魔力の篭ったものを吸収して、栄養に変えている 足も生きている状態ならばマジックドレイン効果を持つ、極めて変わった性質を持つ 今回の上陸は魔力の高いディオールの王族に釣られてだろう。アクセサリの類についていた宝石も魔力がこめられていたので捕食されたようだ 「やぁあああ!?」 こんな都合の悪い生き物に、都合悪くこんな時に遭遇するなんて。だがもはや遅い 次のターゲットは水着だ、魔力繊維で作られた水着は着る者の魔力を受けているため ディオール王族のそれともなれば絶好の餌となる。まずキャリコの水着の紐が狙われ 引っ張られると簡単に解けてしまった。キャリコの水着は紐を引っ張るだけで簡単に脱げてしまう構造 何とか股を閉じて股間部分だけは押さえたが、触手が水着を取ろうと両足を広げ始める 「やっやめなさいったら!?」 「いやっ解かないで!」 アリシアとキャスカはそれよりも状況が悪い。足を閉じることができないし 腕で押さえることも出来ない。キャリコほどではないが脱がせやすいビキニ 胸のリボンに触手をかけられ腰のストラップも同じように引っ張れば外れる状況 アリシアも同じ、二人とも最初は必死に身体を反らそうとしたが 良い結果になるわけもなく、アリシアはふるふる身体を揺らすだけで終わってしまう 今の状態で動けば逆に自分から水着を脱ぐようなもので、抵抗すらできない 「あぅっ! い、いけないこれでは」 魔力繊維を食らった後は、触手から魔力を吸い取ろうとするのは目に見えている 娘達からどんな形で魔力を奪われるか分かったものではない。 母親として抵抗しようとするが今の自分に出来ることなど殆ど無く ぎゅっと体を締め付けられ、身体を締め付ける拘束感と自重での食い込みにさらに焦りを感じるしかない。 さらに無慈悲に触手が蠢き肌を這い、水着の結び目へと伸びていく 「きゃあっ!? ま、マリー!!」 もうダメか、ストラップを捕まれてとっさに叫んだ夫の愛称。 次の瞬間にははらり。と水着が取られるはずだったがそうはならず ストラップが緩んだところで触手が動きを止める。いや消えたというべきか 「人の娘と妻に何を」 「マリー!? あぁマリー夢じゃないのね」 アロハシャツ姿のどこか女性的で、優しげな顔立ちの男性がその手を広げて触手の大本に 似合わないような怒りと侮蔑と殺意を混めた目をする。 エヴァック=マルローネ=ディオール、テレサの夫であり仕事を終わらせて島にやってきたのだが 来たら妻と娘が辱められている。普段は優しい彼もこれには怒る 触手を切り裂いたのは彼の魔法であり手刀に魔力を纏わせ、切断するものだ 「きゃあっ」 「な、何!?」 次にアリシアたちを捕まえていた触手が根元から切れた。切れたというよりも何かに貫かれて落ちたと言う方が正しいだろう 海には鋭く加工された竹やりが1本。そしてそれを投げたのは遥か先の魔道ロボ 「キャスカー!!」 「投槍しながらキャッチなんて酷でござる! お色気展開にしたって無茶でござるよー!」 正しくは機械人というバクフ製のロボット。蛮武ー丸が投げたものだった サイゾウの愛機であり、意思を持ち無茶をやらされるのには慣れている 落ちる姉妹をキャッチするが、テレサの姿が無くパイロットともども冷や汗をかく 「女王!?」 「大丈夫だよ、受け止めた」 「マリー!」 テレサを抱えるマルローネを見て、よかったと息をつくサイゾウだが息をついてばかりもいられない キャリコは機械に触ると魔力過多で壊してしまうため、特殊体質を受ける前に王女達を掌から降ろすと 今度はその掌で水着を直せと王女達を隠す。 何があったか分からないキャスカが状況を把握、何時もの調子でまたサイゾウに叫んだ 「ばかっ遅いわよ!!」 「助けにきたのにそれかよ!」 「キャスカ先に水着を…」 「み、見てないですよね!? は、恥ずかしい…」 キャリコが一番肌を晒しているため、身を隠すようにして水着を着なおしていると 今度は何かが空へ上るような轟音がして 驚いたアリシアが水着を直して様子を見ると、先ほどまでいたタコがそこにはいない 「ヒースさん!」 「ヒース君はだいぶ頭にキテいるようだね、僕も同じだけども」 テレサを下ろして、水着を直しているマルローネが当然の結果だと言う様に空を見ていると 空に一瞬だけ何かの笑い声が響く。過去に報告されたヒースの愛機 禁忌の最大の武器である棺桶形の盾の蓋が開いたときに、このような声が響き渡る 「マリー! よかった本当によかった!」 「ごめんよ、遅くなったばっかりに…」 マルローネに抱きつき、安心したからか力が入らなくなったテレサがそのままマルローネに寄りかかる形になり それを受け止めたマルローネが今度は壊れそうなほどに抱き返す。痛いほどの抱擁も今のテレサには足りない だがそれを無視して、海のほうに黒い騎士が着水すると蛮武ー丸のほうに駆け出してくる これが禁忌、ヒースの愛機なのだがすぐに消えてしまいヒースがその中から落ちてくる 「アリシアすまない俺がいないばかりに! 怪我は!?」 「ヒースさんっ!!」 今度はアリシアがヒースに抱きつく、さきほどもう少し甘えればよかったと後悔していたのと 突拍子も無いことがあったせいで冷静な判断よりも、一緒にいたいという考えのほうが強かった ヒースもアリシアの存在を確認するように抱き返しそのままだ 「サイゾウ、邪魔になるから」 「わーった…お前もこれぐらい素直ならな」 姉と母に毒気を抜かれたキャスカがキャリコを抱え蛮武ー丸の掌に乗ると、場所を少し移動する このままではキスの一つや二つはあるだろうが、それを見ているのも恥ずかしいものがある キャリコとしては見たいが、良くないとあきらめたようだ。 「恥ずかしい目にあったけど、アリシアお姉さまとお母さまはいい事がありましたね」 「キャリコには早いわ、おませなのは」 「キャスカお姉さまにもいい事があったらいいのに」 「キャリコ!?」 「そいつがもうちょいムードってもんがありゃーいいけど、ムリだわキャリコちゃん」 その言葉にむっとなったキャスカがまた喧嘩を始める。どっちも素直じゃないんだからと キャリコが素直じゃない二人を見て、蛮武ー丸と顔を合わせクスクスと笑う アクシデントに慣れているキャリコだから出来る事だろう。ちょっと恥ずかし思いはしたが 楽しいものが見れたと、プラス思考に考え姉と未来の兄の口喧嘩をしばらく観察するのだった 「今日は一日、酷い目にあったわ…子供って元気ね」 「お前も人のこと言えないだろ」 しばらくして母と姉が愛する人と落ち着くと、サイゾウたちも戻ってきて再び海を楽しんでいた とは言うが、サイゾウとヒースは周辺をパトロールしてたので楽しんでたわけでもなく アリシアもヒースがいなくて、また寂しい思いをしていたようだ 「ヒースさん今日はもう離れちゃイヤですよ?」 「明日はもっと海を楽しもう、約束する」 少し夕日で赤くなった海を見て、ヒースに寄り添い身を預けるアリシアがヒースを見上げ 意識してるわけではないが自然と色気のある声と手付きで顔に手をやると ヒースもアリシアを抱え、より身体を近づける。 初々しかったのが事件でタガを外し、一気に積極的になった珍しい光景 テレサとマルローネも先ほどからずっと慰め、求め合って二人だけの世界を作っている 最近仕事で会えなかったのもありこっちもリミットを外してるのだろう 「マリー明日は政務も外交もなしよ?」 「分かってる、明日は我侭を通せるようにしたからね」 このまま娘がいなければキスに行きそうな二人と、個室ならキスぐらいしてそうな二人を見て キャスカがため息をつく。素直になれないのと喧嘩ばかりする恋人に どうしてこうなのかと、自分達もあれぐらいできたらと それはキャスカだけでなくサイゾウも同じようで、ため息をついて見せた 「俺の女はどうしてこうなんだろうな」 「私の台詞よ」 「そーかよ…キャスカ」 「何よんっ!?」 重なる影が見えぬ海、蛮武ー丸をお供にイルカフロートで遊んでいたキャリコが 浜のほうの姉や親を見て、ふふっと子供っぽくにやけてみせる 素直じゃないなと蛮武ー丸と同じ事を考えでいるようだ。 「素直じゃないでござるなー」 「蛮武ー丸さんもサイゾウさんとお姉さまのことそう思う?」 「ヒース殿とアリシア殿みたいに押しが弱いのも考え物だが、ツンツンしてるのもムズムズするでござる」 なら、もう少しだけツンツンしてない二人を見てようかとイルカフロートから浜を見たキャリコに それがいいと頷く蛮武ー丸。今日はギリギリまで海で遊べるしいい物が見れると アクシデント分を帳消しにできそうだと、キャリコはまたにんまりと笑う 今日は別荘で話の中にしかないようなやりとりが見れるだろうと確信しながら 終われ