赤い暴風が走った。鋭く、滑らかに、蛇蝎の如く。    人型の魔物――カージナル・テールは、腕組みのようなポーズを取っている。  高みから下界を睥睨する王のような姿勢はそのまま、尻尾だけが激しくうねったのだ。  まるで鞭だ。死の風を孕んだ魔の鞭だ。  唸りが机の列を薙ぎ倒す。破砕される木屑と調度品、そしてフモモフの白い瘴気が渾然一 体となって舞う。  打撃ではなく、ほとんど斬撃に等しい。尻尾の打擲を受けた机や端末は、砕かれるのでは なく、綺麗な輪切りにされて吹き飛ぶ。    上級に分類される魔物の一体、カージナル・テール。  凶暴さでは『魔人』にカテゴライズされる個体中でも群を抜く。魔物が現世の生物に向け る欲求はほとんどが「食欲」だが、カージナル・テールはひと際それが激しいのだ。    乱舞する尻尾から逃れ、モードと宗助の二人はそれぞれ左右に跳んだ。  黒手袋が引き金を絞り込む。銃鳴と銃火光(マズル・フラッシュ)の音と光が、視聴覚室 を戦場へと作り変える。  宗助のカービン銃型マギナは汎用タイプだ。特化したアストラル処理は施されていないが、 使用する弾丸に関わらず、魔物に対して有効打となる魔力を帯びさせる。  弾丸は必殺の雨と化し、濃密な瘴気渦巻く宙を切り裂く。    ふわり、とカージナル・テールは後退した。  不規則のような、そうでないようなステップを踏み、水中を泳ぐ魚さながらに体と尾を翻 す。奇怪な舞踏のようなその動き、その俊敏さは、人智を絶していた。易々と火線をくぐり 抜け、乱れ飛ぶ弾幕に一指も触れさせない。       逸れた銃弾がそこかしこを跳ねる。白い淡雪のような瘴気が、きいきいと鳴くフモモフご と弾ける。猶も銃火を放ちながら、宗助は舌打ちした。   「この、全弾避けくさるかッ! やばいね、俺の自信の折れ線グラフは……」 『絶賛右肩下ガリ中ダゼ=\―ト、考エテイルナ』    突如、二人は呻きそうになる。脳裏に彼らのものではない声≠ェしたのだ。  頭の中が尖った爪で擦られるようだ。カージナル・テールの思念であった。   『雄個体ノ方ハ、何ヲ考エテイルカガ、読メル。他ノ個体ト変ワラン。ダガ、雌個体ノ方ハ 読ミ取レヌ。コチラ側<m生キ物ニシテハ、妙ナ精神波形ヲシテイル』 「! ――天羅地網(オブスタンティア)=I」    モードは短く呪言を叫んだ。同時に魔物の思念は二人の脳裏から掻き消える。  部隊指揮官が持つ情報共有呪力の統御権、所謂ルート権限により周囲一帯の精神感応封鎖 を行ったのだ。   「宗助くん、カージナル・テールは人の精神を読むわ。以後の念信を封じます!」 「あいよッ」    通常、念信は表層意識間でのやり取りだ。心中深くにある情報をやり取りする事はできず、 その意味では機械的な有線・無線による通話とさして変わらない。  この魔物の念はその域を越え、隠した思考や感情をも読み取る深度までの送受信を可能に していた。だからこそ宗助の意識を読み、銃撃を容易く回避したのである。      上級魔――魔人の中には、こうした力を持つものも存在する。  シギュワリやフモモフのような下級とは隔絶した戦闘能力や異能を備えるだけでなく、高 度の知性を備え、人間と会話するものさえある。  無論、そこに真の意味での精神的交流はない。捕食するものとされるもの同士の、戦闘行 為における一場面に過ぎない。  それも当然だった。鳥と虫の間に友情が成立する事はないのだ。        軽快だった殺戮の雨音に新たな調べが加わった。  霰がトタン屋根に降り注ぐような音だ。カービン銃の猛射が赤き魔人に命中したのである。  避けるのは止めたらしい。というより、精神感応封鎖により宗助の思考を読み取れなくな ったのだろう。    が、効いていない。  煩わしげに尾をよじる甲殻の表面では銃弾が火花を散らすが、目立った損傷を与えた様子 はなかった。   「汎用型の威力じゃ魔人級の装甲は抜けない、ってか」    焦燥を押し隠す宗助とは対照的に、モードは流れるような動きで剣尖を持ち上げる。  まっすぐに伸ばした切っ先は、目線と同じ高さで床と水平に横たえられる。    朱唇から牙がこぼれ、秘めた意思の力強さを感じさせて呪文が紡がれる。     「――我が目に御敵なく、我が手に吹毛(すいもう)あり。  汝、金の剣にして銀の剣、赤金(あかがね)の剣なり。兵(つわもの)、砦、邑(まち)、 汝が刃もて毀(こぼた)れざるはなし……」      大剣の根元で、宝珠が紅く輝き出した。  と、モードの周囲に蒼い焔が生じた。煌たる複数の光、それらは揃って拳大の球形七個と なって凝り、まるで衛星のように惑星たる少女を取り囲む。    マギナを介した剣の魔術であった。『ネガキャリバー』が蓄えた魂魄のエネルギーを転用 し、攻撃用に高圧縮した魔力を生成したのである。  蒼白い眼差しが一際剛い光を帯び、      「剣(つるぎ)成す僕よ、この世の暗黒(くらき)を司る悪の幕屋を断て。――アストラル・ フルドライブ! 破剣式(ブレイク・ブレイド)=I!」       七つの魔球全てが射出された。  噴射音も高らかに、闇に稲妻状の軌跡を刻んでひた走る。その一発一発に、巨岩も易々と 砕く魔力が籠められている。  泳ぐような妖影へ吸い込まれるように、全てが命中。  爆発した。  爆炎と轟音が室内を荒れ狂い、余波で撒き散らされたフモモフの瘴気が濛々と舞う。噴火 口からふき上がる煙のようだ。    モードと宗助の全身を、ライト・グリーンの光が薄いカーテンのように取り巻いている。 その光に阻まれ、着弾時の爆風は二人の身まで達してはいない。  収まりきっておらぬ爆風の余波に紛れるように、光はフッと消え去った。  着弾の衝撃波を防ぐ為に、モードは破剣式≠ニ同時に簡易な防御結界も展開していたの だ。異なる術式を複数駆動させる手並みは、練達の域と言えた。  「サンキュー」とモードに礼を言い、カービン銃を構え直した宗助は不審そうに、   「終わった――か?」 「……駄目! まだよ!」    噴煙を断ち割って飛来する一筋の色――どす黒い赤の奔流を、モードと宗助は飛び退って かわした。  床に転がりながら、宗助のカービン銃が咆哮する。モードは机の残骸を足場に高々と跳躍、 壁際まで逃れた。    ひゅん、と淀んだ空気が切り裂かれた。  長い長い尾を旋回させ、カージナル・テールが悠然と姿を現す。あれだけの魔力の直撃を 受けながら、特に傷ついた様子もない。     『成ル程』    またもや二人の脳裏に、冷ややかな思念が叩きつけられた。  妨害霊波(ジャミング)を通り抜ける強出力で以って送信されたのだ。もっとも己の思念 を放射するだけで、モードらの思考までは読まれていないようだ。   『雌ヨ。何故カ知ランガ、貴様ノ精神塊ニハ我々ノ同族ガ混ジッテイルナ。ソレガ意識ノ同 期ヲ阻害シタカ。――確カニ、仲間ノ意識ハ読メンノデナ』    魔人の声≠ヘ淡々と告げる。モードは唇を噛んだ。  斃すべき敵から同胞呼ばわりされる。こんな屈辱はなかった。    黒いブーツが床を蹴る。  襲来する尻尾を大剣が払い落とした。再度襲い来る動きを読み、それに合わせてまた払う。  顔を狙ってくる一撃を、首を傾けるだけでやり過ごす。すかさず撥ね戻る尻尾へ追いすが り、逆に一太刀を浴びせる。  鞭術にはあり得ぬ槍のような突きが連続する。大剣はその全てを小枝の軽捷さで捌いた。    甲殻から黒に近い血液が飛沫いた。遂に剣が競り勝ったのだ。   「――くぅッ!?」     優勢と見えるモードは、しかし呻きを押し殺す。  体が動く。思考が冴える。対手がどう動くかも判る。  それと同時に、口元の牙が鋭さを増している。常ならぬ力が柄を握る手に、床を踏み込む 足腰に篭る。    それゆえの恐怖だった。自分が魔物化してゆくことへの。      この空間は瘴気が濃すぎるのだ。魔物化という宿痾に侵されているモードにとって、高濃 度のフモモフの瘴気は症状を進行させる毒素だった。  モードが恐怖したのは、己の変形が苦痛だからではない。  逆だ。  心地よいのだ。性的快感に近いほどの、それは法悦だった。       剣と鞭が咬み合った。  どちらからともなく撥ね退け、転じた各々の一閃を対手へと疾らせる。  石火の更に何百分の一の瞬間――モードは己の失策を悟り青褪める。  撥ね退ける一撃を大きく振り抜き過ぎたのだ。当然、剣を戻すのに僅かなタイムラグが生 じた。続く攻め手にも。  モードの実際の挙動を担当する魔力操作が、魔物化によって引き出された運動性を扱いき れなかったのだ。謂わば思考が体に追いつかなかったのである。    魔鞭を両斬する筈だった大剣は虚しく流れ、同時に肉を断つ音がした。  血飛沫が弧を描いて飛んだ。  周囲の床が赤く染まる。ブレザーの胸元を鮮血に濡らし、モードはよろめく。  鞭のしなりは袈裟懸けの斬撃となり、彼女を切り裂いたのであった。   『興味深イ。仲間ガ混ジッテイル個体ヲ喰ウノハ初メテダ』    魔人の思念には、ある感情がたっぷりと塗されていた。  人間とそっくりの想い=\―そう、異界異形の生命も、ある局面においては人と同じ情 操を持つのである。即ち、嗜虐の歓喜を。   『実ニ興味深イ』     どう、と重い音が瘴気の胞子と共に舞い上がる。取り落とした大剣に覆いかぶさるように、 モードは崩れ落ちる。  返り血に染まる尾の尖端が鎌首をもたげた。   「モード!!」    宗助は叫んだ。  凄絶な剣風の応酬に援護もままならなかったカービン銃から、どん、と何かが発射された。 銃声とは段違いの、腹腔に響く重い音。    火を噴いたのは、カービン銃の銃身下部に取り付けられたグレネード・ランチャーだった。 擲弾は避けようともせぬカージナル・テールの肩口に命中した。  同時に赤き魔人の体表面は白く塗り替えられ、体全体が硬直した。    宗助の頬を凍てついた空気が撫ぜる。  霜だ。擲弾は命中と同時に極低温を発生させ、息を一つ二つ吸う間に魔人を氷漬けにした のである。尻尾を振り上げた姿勢のまま固まり、氷の珠を輝かせるその姿は、さながら邪神 殿に祀られる汚怪な偶像だった。   「へッ、俺の攻撃なんざ効かないと思って油断したな」    せせら笑いかけた宗助は顔をしかめた。   「――ったく。『凍結』のアストラル処理済みグレネードでも駄目かよ」    ぴしり、と冷酷な響きがその嘆きに答えた。  奇怪な氷像にひびが入り始めたのである。網の目のように、それは全身に広がりつつあっ た。      割れつつある氷像を捨て置いて、宗助はうずくまるモードに駆け寄った。「大丈夫か」と 屈みこむ。沈痛な面持ちで、   「――すまない。背中を護るとか大口叩いて、この様だ」 「それは謝ることじゃあ、ないのでしょう?」    重傷の割りにはっきりした声でそう言い、「相棒なのだから」とモードは微笑した。  『ネガキャリバー』の赤い宝珠が、その輝きを増している。  ブレザーの制服は赤く染まっているが、既に疵口からの出血は止まっている。実の所、下 手をすると致命的なものになりかねない負傷自体は、急速に治癒しつつあった。  これまでに『吸魂』して蓄えた魔力を使っているのだ。専門の術師が行使する治癒呪法レ ベルの再生能力で、疵を癒している。    だが重傷である事に変わりはない。その所為で、体を覆う魔力の流れは操作出来ていない。 今のモードには『ネガキャリバー』を持ち上げることも出来なかった。      「奴の核(コア)は二つだったよな、確か。ああ糞、面倒くさい」    宗助はため息混じりの声で言った。  核とは魔物の心臓部ともいえる器官である。下級の魔物ならば、核を破壊せずとも体組織 の大半や他の重大な器官にダメージを与えれば殺傷は可能だが、上級魔は違う。核を破壊せ ねば斃すことはおぼつかない。  そしてカージナル・テールの核は二つ――左胸と下腹部中央の二箇所にあるのだった。    宗助はモードの耳元に口を寄せた。この際に、少女の鼓動はひくんと跳ね上がる。    「一個は俺がやる。二個ともやる、といいたいんだが、ここは仲良く山分けといこう。  俺が先攻だ。疵が癒え次第、モードは続けて仕掛けてくれ」 「でも……どうやって?」    苦しげにモードは訊いた。宗助は高度な攻撃魔術の才はない。カービン銃の効果がない今、 カージナル・テールに有効打を与える術があるとは思えない。  宗助は、にやりと笑った。  黒手袋を嵌めた左手を軽く翳す。   「手はあるんだ。――俺にしか使えない手が、ね」    今更のように、その黒手袋の下を見た記憶がない事にモードは気づいた。  手だけではない、足もだ。さり気なく振舞っていたが、宗助が袖をまくったり、丈の短い ズボンを履いたりした姿を見た事は、少なくともモードにはない。――だが、何故?      鋭角的な残響と共に、氷が全て砕け散った。  きらめく破片をぬぐい捨て、悠然と魔物が動き出す。    宗助は立ち上がった。  カービン銃を投げ捨てる。そのまま歩き出した。口笛でも吹き出しかねない気安さだった。   「宗助くん、あなた何を――!?」 「もう、誰かを護れないのは御免だ」後ろを見ずに宗助は言った。「御免だよ、ほんと」      真っ向正面から、尾のひと振りが宗助の頭上に降って来る。  右の手刀が迎撃した。  五月蝿く飛ぶ羽虫でも払うような、そんな動きで円をえがく。それだけの動作が、死鞭を あらぬ方向に逸れさせたのだ。    単なる剛力ではない。流れに逆らわず、流れをいなして制する柔の体技であった。    だが、豪剣のような勢に触れて、無傷で済む訳もない。  黒手袋の布地は引きちぎれている。モードの位置からではよく見えないが、中の手が無事 で済んだとは思えない。  滑るような足捌きで、しかし宗助は魔物に肉薄した。  鞭は、その長大な間合い故に使い手の懐に入り込まれればその効果を失う。宗助が狙った のもその一点であったのか。    人間が使う武芸の攻略法としてならば、確かにこれが定石だろう。  だが、この対手は人ではない。  異界の理を恣(ほしいまま)にし、顕界を思うさま蹂躙する大いなる魔――魔人なのだ。      鈍く、厭な音がした。  宗助の歩みが止まった。モードは蒼白の面を引き攣らせる。    宗助は目を瞬かせる。自分の胸元に視線を落とす。  血塗れの尖ったものが、まず視界に映った。  その血は宗助のものだった。胸の中央を抉り抜き、露になった尾の切っ先に塗りたくられ た、宗助自身の血だった。    背後から回り込んだ魔人の尻尾は、背中を徹して少年の胸板を突き破ったのである。  宗助は咳き込んだ。呼気ではなく大量の血を吐く。  わななく宗助の体は、串刺しにされたまま吊り上げられてゆく。軽々と、早贄の如く。   「いやあああああああ!!」    モードは絶叫した。  狂気のように大剣を持ち上げようとするが、よろめく体は満足に立つ事もできない。まだ 疵が再生しきっていないのだ。    少女の叫びなど意に介さぬように、魔人の口が開いた。蟹のように、人でいえば下顎の部 分が展開する。  尻尾が手前に引かれた。宗助も――魔人の餌も近づく。  しゅうしゅうという呼気と、粘っこい唾液と、そして餓えを満たせる歓喜とが、その口中 から噴きこぼれ――     「――引っかかった」      尻尾の移動が止まった。  甲殻類の首が、不思議そうにかしげられる。  瀕死の宗助が洩らした声だ。それは憫笑に近い口吻であった。   「知ってるぜ。おどり喰いが好きなんだよなァ、お前さん」    完全に止めを刺した死体ではなく、まだ息のあるものを食す。カージナル・テールに見ら れる一般的習性を、宗助は指摘している。   「レアはよくないよ。ちゃんと火を通さねーと、腹壊すぜ」     宗助は口の端を歪めた。小刻みに震える両の黒手袋が持ち上がる。  血泡を噴く唇は、高らかに呪言をも吐いた。   「兇・邪・悪・恨・怨・謀・禍・乱! 八識の毒は鬼角に溜り、積卒こぞりて的殺の門へ!」    何も触れていないのに、左右の黒手袋が吹き飛ぶ。  モードは目を見張った。宗助の両手全体に糸のような紫電が生じている。  露になった手指は、甲は、全てが黒い。光沢のある漆黒さといい、硬質で武骨な形状とい い、天然自然のものではない。  うねる死鞭を捌いて見せたのも道理、明らかに人工物――機械的な義肢の類いだ。    掌の中央部には水晶状の塊が埋め込まれていた。  それらは燦爛たる光を放ち、胸の前で翳した左右のそれ同士を電流の束で繋ぐ。    狼狽したように魔物は尻尾を振り回す。獲物を振り落とそうとする動きに揺さぶられなが ら「遅いよ馬ー鹿」と宗助は嗤う。  血塗れの口が最後の呪言(プレイヤー)を叫んだ。     「――雷角槍(マイナデス・ランス)=I!」      左右の水晶塊が繋いだ電流の間から、閃光が迸った。  集束したアストラル・プラズマの光芒――百万ボルトに達する『雷電』の槍だ。  放った光と熱に耐えかねたように、宗助の両腕が爆ぜるのと同時に、神鳴る槍先はカージ ナル・テールを直撃した。  己を刺し貫いた魔人の尻尾を灼き切り、その腹部にある一個目の目の核を貫通し、余る勢 いで背後の壁に直径五メートルの大穴を開けた。    この世の生物の発声器官では模倣不可能な悲鳴が上がる。  千切れた尻尾が少年を取り落としたが、そちらへ注意を向ける余裕は既に魔人にはない。  よろめく赤い甲殻が、ほんの一瞬、翳った。    魔人の顔が持ち上がり、緑の複眼はそれを見た。  疵の再生が終わるや『ネガキャリバー』を執って馳せたモードを。  大剣を振り翳し、自分たち魔性以上の速度で襲い来る少女の姿を。     「はああああああああッ!!」       気合一過、たばしる大魔剣は右八双からの斬打となり、カージナル・テールの左肩口より 斜めに入って右脇腹までをひと息に駆け抜けた。  余る勢いで、剣身の半ばまでが床に斬り込んで止まる。  残りの核もろとも完全に両断された上半身と下半身は、それぞれ砲弾のような勢いで別々 の方向へと撥ね飛ばされた。      モードは荒い息をついた。  床に斬り込んだままの剣柄から手を離し、ぎょっとしたように振り向く。  脳裏にカージナル・テールの思念が届いたのだ。   『――オ前達ハ、自己ガ生命活動ヲ停止シテ後、ソノ意識体ノミガ高イ、マタハ低イ次元ヘ 遷移スルト推論シテイルソウダガ』    撥ね飛んだ魔人の上半身は壁際に転がっていた。  体は断末魔にのたうちながらも、思念だけは無機質なまでの平静さを保っている。  肉体と精神を完璧に分離させたその有り様は、今更のように昆虫めいた不気味さを少女に 感じさせた。   『雌ヨ。モシソノ遷移ガアルノナラ、オ前ガ逝クノハ、オ前達ガ設定シタ場所デハナイナ。  我々ト同ジ向コウ側<m――何ト言ウ呼称ダッタカ、オオソウソウ――地獄<_。  一足先ニ、ソコデ待ッテイルゾ……』    カージナル・テールは動きを止めた。  どろり、と赤黒い甲殻が溶け崩れた。泣き別れになった下半身も、それに倣う。粘液状に 変化し急速に腐敗、気化していく。    大剣の宝珠が爛々と輝き出す。『吸魂』が完了したのだ。  体の奥底へと流れ込んでくる「何か」――魂魄の熱量を感じ取り、その異様な感覚に慄き ながら、モードは魔人の残骸から目を逸らした。  その最期の言葉については、出来るだけ考えないようにした。     「宗助くん! しっかりして!」    モードは大剣を捨て、床に大の字になった宗助へ駆け寄った。抱き起こそうとして眼を見 張る。  宗助の両腕は肘から先が吹き飛んでいる。  だが出血はない。配線やどういった機構なのか判別しがたい部品の欠片が、断面では露に なっている。   「……カージナル・テールは」と、宗助は血塗れの口で言った。「獲物を生きたまま喰らう からな。逆に言えばどんな攻撃でも即死はない、と賭けてみたけど……はは、大成功。  しかし、胴体も丸ごと換装しとくんだったよ。臓器の一部は、手足の制御用に取っ替えて たんだけどな。……ま、そのお陰で少しはもつか」    特売品を買い逃したとでも言うように、宗助はモードを見て苦笑した。    「喋らないで。すぐ治癒(ヒーリング)をかけるわ」    硬い表情で治癒の術式を唱えようとするモードを、「しなくていい」と宗助は達観したよ うな、透明な声で止めた。   「もう俺は駄目だ。余計な魔力を使うことはない」 「そんな――!」    モードは顔を歪ませた。宗助の体の下では、血溜まりが見る間に面積を広げている。  その量を見れば、宗助の発言が現状を正しく認識したものである事は明白だった。  咲中宗助は死ぬ。間違いなく。    同じ学園の仲間の死を見取った経験は、数限りなくある。慣れたとは言わないまでも、動 じることはもうないとモードは思っていた。  ひどい誤りだった。  負傷は癒えた筈なのに、体の震えが収まらない。思考は出鱈目に煮え、反対に腹腔は冷え ていく。  彼が――宗助がいなくなるという事実が、これほどに受け入れ難いものだったとは。     「それより、まあ聴いてくれ。最期だから、ひとつ懺悔ばなしをさ。  さっき、恋人を魔物に殺された奴の話をしたろ? ――あれ、俺の事なんだ」    思わずモードは宗助を見た。天井を見つめながら宗助は続けた。   「学園に来る前だよ。……幼馴染だった。隣近所に住んでてさ、餓鬼の頃から一緒で、気づ いたら惚れていて――その女が、喰われた。  俺の目の前で。  俺は重傷を負ったけど、命だけは取り留めた。一緒に喰われた方が幸せだったかもと、何 度か思ったよ。  あいつを喰った魔物は、どうなったか判らない。低級魔だったし、その直後に学園のマギ ナ使いが群れごと掃討したから、そこで一緒くたに退治されたか。  それとも逃げ延びて、まだ人間を喰らってるのか。判らない。  俺は、だから学園に転入を希望したんだ。少なくとも、仇をとった気にはなれる。――そ うでも思わなけりゃ、頭がおかしくなりそうだったから」    けど、と宗助は言葉を継いだ。   「適性検査で撥ねられた。俺にはマギナ適性はなかったんだ」 「え?」    モードは耳を疑った。  マギナ適性なくしてマギナは使いこなせない。正確に言えば、施されたアストラル処理は 発動しない。適性者は世界的に見ても希少であり、それが故に『学園マギア』は  だが今までの任務も、今夜も、宗助はごく普通にカービン銃型マギナを使用していたのだ。     「絶望したよ。俺はどうしても諦め切れなかった。何でもすると学園に食い下がった。  そこで学園側から提案されたんだ。義肢型マギナの披験体にならないか、とね。  一も二もなく俺は承知した。そうして手足をそっくり入れ換えた。――こいつは」    宗助は一の腕のない右腕と、一見変哲もなさそうな右足を少し持ち上げた。   「オルトフォゴール式人型マギナのカスタムパーツ、その更に余剰品さ。  あるのは、適性のない者に最低限のマギナ適性を付与するアジャスト機能、それと『雷電』 のアストラル処理だけ……」    宗助は少し咳き込んだ。  カージナル・テールの核を一個、破壊した雷撃の魔術だ、とモードは思った。至近距離か らとはいえ、上級魔にあれだけの痛打を浴びせられる攻撃魔術は中々ない。   「それも出力が不安定過ぎて、射程はほとんど零に近い。おまけに一発撃ったらこの有り様 だ。……素敵な仕様だろ? 筋力増幅機構もないんだからな、それがありゃ、必死こいて格 闘技を鍛錬しなくて済んだのにさ」 「知らなかった……」    モードは茫然としたように言った。  学園には重い過去を背負っている者も多い。本人が語らなければ深く詮索しないのが、生 徒間での不文律のようになっている。  だから、とは言え――私はこの人のこと、何も知らなかったんだ。    宗助は目を伏せた。   「済まん。こいつは試作品だから、機密扱いでね。口止めされてた。  こいつは俺の想像だけど――この義肢型マギナの開発が成功したら、その内マギナ適性が ない奴も戦線に駆り出されるんじゃないかな。俺みたいに体の一部を、あるいは全てを機械 に換えて」    「多分だけどな」と宗助は結んだ。  有り得る話だ、とモードは暗然たる思いに駆られる。  現状、魔物どもとの戦いにおいて、人類側は後手後手に回っている。魔物と戦えるマギナ 適正保持者は常に希少だし、若年時から学園に選抜されて訓練を受けるとはいえ、消耗率も また激しいのだ。    そうして、いずれ誰も彼もが宗助と同じ体を――万能札(ワイルドカード)を掴まされる のだろうか。     「まあ――それでこの世界がどうなろうと、俺にはもうどうでも良かった。  適当にへらへらして、死ぬほど訓練して体を苛めて、それで戦って魔物をぶっ殺していれ ば、考えたくないことは忘れていられた。  正しくは、出来るだけ考えなくて済んだってとこか。泣き叫びながら喰われて無くなって いく、あいつの最期の顔を。――でも」    疲れたように宗助は微笑んだ。   「でも、君と組んで戦ってた時は、少し違ったかな。何ていうか――張り合いがあったよ、 やってる事に。何でだろうな」 「宗助く……!?」    最後まで言い終えることができなかった。  モードの全身が震える。自分で両肩を抱き締めても震えは止まらない。  魔物化の兆候だった。それも、これまでで最も大きい。    眼球の色全てが、見る者の網膜に焼きつきそうなほどのブルーに変わった。    唇は三日月状に割れ、乱杭歯が伸びる。  グローブを突き破り、爪がナイフのように尖る。  制服のあちこちが裂ける。胸の悪くなるような音を立てて骨格が変形し、優美な肢体のフ ォルムそのものが変わっていく。    うるるぅ、とモードは吼えた。  人の声ではなかった。動物の、この世のあらゆる生物が搾り出す声ではなかった。  魔物の鳴き声だった。     「始まったか」と、苦しげに宗助は言った。   「魔人級の魂魄を『吸魂』したんだ。今の君の状態なら、只じゃ済まない。……モード、気 をしっかり持って、よく聞くんだ。『ネガキャリバー』による魂魄汚染≠中和する方法 ――たった一つ、あるよな? それをやるんだ」 「宗助くん、あなたそれを――!?」    この火急の時にも、モードは愕然と宗助を向いた。それは一般の生徒には知られていない 情報だった。 「知ってる」と宗助は頷き、モードを見つめ返す。     「俺を斬れ。俺を殺して、魂を吸ってくれ」      ――斬殺した対象の魂魄を『吸魂』する魔剣、『ネガキャリバー』。  異界の魂魄による穢れを雪ぐには、現世の魂魄を以ってするしかないのだった。  といって、動物の魂では適わない。あくまで人間のそれでなければならない。  今のモードにとって、他者の命は誰であれ切り札(ワイルドカード)に成り得るのだ。己 を生かす為の。    当然の帰結として、この治療策は殺人という形を取るしかない。まだモードも試みたこと はない禁忌の法だった。   「気に病むこたぁないって。き、緊急避難てやつ……で」    言葉をもつれさせながら宗助は言った。いつの間にか、その貌は蒼白になっている。   「流石に、そろそろきつくなってきた……。早くやってくれ、モード。死んじまった後じゃ あ、刺したって意味がない……。鮮度を保つ活け締めは、生きてる内にやらないと……って、 これは違うか……」    くく、と宗助は笑った。ひょっとすると痙攣しただけかもしれなかった。   「駄目だな、生死を賭けたジョークだってのに……し、死ぬほど面白くない……。  ま……君は生きろよ、モード……。魔物じゃなく……に、人間として……」 「そんなこと」モードは幼な子のように首を振った。「出来る訳ないでしょう」 「それでもやるの……。大丈夫、君なら……出来るさ。……な?」    拗ねてみせる恋人を言い聞かせるような口調で、宗助は言った。    掌の肉を突き破るほど拳を握り締めながら、やっぱり好きだったんだ、とモードは想う。  私はこの人に惹かれていた。いいえ、過去形ではない。今も≠サうだ。  でなければ、こんなに辛い筈がない。これからしなければならないことを考えただけで、 頭の芯が灼き切れそうになりはしない。    なぜ好きになったのか、はじまりは明確に思い出せない。  彼の飾らない態度か、すれ違った時のにおいか、最初に危ない所を救ってくれた銃弾か。    宗助が何か口にした。  意識が大分朦朧としているようだ。モードの知らない、誰か女性の名前らしかった。  彼の心の半分は、とうにその名前の少女と死んでいたのだと知っても、モードの感情に変 わりはなかった。     「それと、ごめんな……君の想いは……知ってたけど……応えてやれなくて……さ……」 「――ひどい。それを今言うの?」    精一杯の泣き笑いの表情でモードが言うと、「だな」と宗助も破顔した。  彼女の好きな顔だった。彼女が好きになった顔だった。    その顔が歪んだ。死相が色濃く浮き上がっている。   「……やばい……マジで……。俺の命……無駄遣い、させないで……くれ……頼む……頼む よ……モード……ッ!」 「宗助――!」    モードは偲び続けた者の名を呼んだ。青白い双眸から熱いものが噴きこぼれて頬を濡らす。  涙ではなかった。  それは、血だった。    モードは手を横に伸ばす。転がったままの大剣の方へ。  と、床に突きたったままの『ネガキャリバー』が生あるもののように跳ねた。求めに応じ、 ひとりでに抜けた魔剣は宙を走り、剣の主の手中に収まる。      呪われし愛剣を、モードは振り上げた。  悲嘆と絶望と悔恨と、そしてありたけの愛をこめて、それを振り下ろした。        「――解除(エクストリコ)=v    モードは呟くように口にした。  ルート権限による念信封鎖を解いたのである。すぐに咳き込むような声≠ェした。   『……ード! ちょっとモード! 聞こえてる!? ああもう、一体どうしたってのよ! 宗助の馬鹿も返事しろオラァ!』      視聴覚室の前の廊下だった。  モードは床に座り込んでいる。宗助の体をかき抱いたまま。  もう動かず、喋る事のない宗助の左胸には、血痕も生々しい疵痕がひとつ、あった。  その疵を生じさせた『ネガキャリバー』は、すぐ傍の床に横たえられていた。   『こちらモード』と、抑揚のない声≠ナモードは続ける。   『損害報告(ダメージ・リポート)。生存者、一名。死者、一名。  全員これより撤収します。速やかに所定の場所まで集合して下さい』 『――了解しました』    一拍の間の後、何か重いものを飲み下すような口調でヴィクは応えた。『交信終了(アウ ト)』とモードは念信を切る。    モードは視線を落とした。  鎖骨の辺りに宗助の頭が乗っている。先程閉じさせた目蓋は、もう開く事はない。  そっと黒髪を梳いた。  モードの体は人間の輪郭を取り戻している。伸びた牙や眼の色も、今夜の任務に就く時と 同じ状態だった。    モードは片手を上げ、空中に火の召喚五芒星を描く。  人差し指の先に灯った赤い光によって、暗い廊下に星型の呪印が鮮やかに浮かび上がる。  火の魔術だ。軽く手を振ると、五芒星はふわりと視聴覚室の中に飛び込む。  途端に火がついた。  あらかじめ油でも撒いておいたかのように、瞬く間に教室中が紅蓮に包まれる。フモモフ の群れの弱々しい鳴き声ごと、白い瘴気が赤い舌に舐め取られ、穢れた地が浄火されてゆく。  照り返す炎の赤に紛れ、少女の頬に残る血涙の擦れ痕は定かではなくなった。    最初から判りきっていたことだ、とモードは想う。  いつかはこうなる。このマギナに選ばれ、このマギナを選んだ時点で、それは逃れようの ない一本道に入り込んだという事なのだ。  どうしようもないイカサマを仕掛けられた、この戦いの果てに続く道へと。    モードは己が運命を託すべき魔剣を眺めた。  それを理解して猶、生まれて初めてといっていい、勁烈な憎しみの目で見据えた。     「帰りましょう、宗助くん。皆が待っているわ」    視線を転じ、咲中宗助だった物体に優しく声をかけた。  ふと、何かの書物で読んだ言葉を、モードは思い出す。  汝の劍を元に収めよ。すべて劍を執るものは劍にて――    続く最後の一節を、モードは口にしてみた。     「――亡ぶるなり=v      抱きしめた相棒から最後の温もりが消えてゆく。  それが完全に無くなりきるまでは、彼についていようとモードは決めた。       【The End】       ■学園マギア■ 魔術と科学が混濁する世界。 人は”マギナ”と呼ばれる武器で魔術を行使し、科学をもってこれを鋳造した。 マギナとはマギ(魔法)とマキナ(機械)が組み合わされた造語である。 人は戦わねばならなかった。 心を持たぬ機械のように無慈悲な殺戮を繰り返し、飢えた獣の如く人間を喰らう異界の魔物達。 そして、それを利用する悪しき人間達と。 魔物の肌は鉛も火薬も通す事無く、ただ、マギナによる攻撃と魔術でのみで駆除する事ができた。 しかしマギナを自在に扱う才を持ち、魔物を駆逐できる力を持つ人間は極わずか。 そして素質ある一握りの子供たちを集め、実戦を経て人を守る教育機関が創られた。 特務学術機関「Magina-Academia」 年端もいかぬ少年少女に高度な魔術とマギナによる戦闘技術を教育し、 形だけの学生生活を味わわせるその機関を、人は『学園マギア』と呼んだ。 社会を守る為の生贄の兵士。彼らは何を思い、何を成すのか。     ■学園マギア■ モード・エヴラール 特務学術機関「Magina-Academia」所属。18歳の金髪ロングストレートの少女。 白い瞳で口元には鋭い牙が生えている。 物静かで思索的な性格でやや内罰的な傾向がある。 人当たりがよく面倒見もいいので、後輩達からは慕われている。 「吸魂」のアストラル処理が施された両手剣型マギナ『ネガキャリバー』 人間でも魔物でも斬り殺した相手の魂魄を吸収し、自分の傷を癒したり魔力に変換したり出来る。 しかし異質な存在である魔物の魂魄を過剰に吸い続けると、使用者は徐々に魔物へと変貌していく。 歴代の使用者は完全に魔物化する前に全員戦死している。 彼女も元々青かった瞳が白くなったり(視力は逆に異常向上)、牙が生えたりと魔物化の兆候が 出始めており、魔術や薬品で症状の進行を何とか抑制している。     ■咲中宗助(さくなか そうすけ)■ エヴラールと同年代。黒髪黒瞳(但し絵柄によって若干変化する) 性格は普通で容姿も普通だが妙にもてない。魔物に恋人を殺された為、自らマギア学園に編入。 魔力を操る才能が無いため、後天的に自ら四肢へマギアを移植。隠れて肉体鍛錬や識学向上に励んでいる。脱ぐと凄い。 経歴について黙秘を貫いているため、周りからはちょっとアホでそこそこの能力の普通の子という印象。その他の設定は、ストーリー構成上の都合に任せる!     ■学園マギア■ ヴォール・ヴィク・ウォーターマン(18)♂ 「Magina-Academia」所属のマギナ使い 見るからに男と分かる女装姿の変わり者 お姉言葉で、素直じゃない性格。厳しいようで人に甘い ストロベリーブロンドのウィッグとゴシックドレスがお気に入りで戦闘時もその姿で通している 長身で男前の癖に女装が異様に似合っている為、文句を言う人間はいない 意外にも女子や子供の人気は高い 鞭型のマギナ「V.Kシモンズ」は「停止」のアストラル処理が施されており、触れた魔物の動きを止めて滅多打ちにする 破壊力はそうでもないが一度に10体まで止められ、強力な援護能力を持つ     ■学園マギア■ フモモフ 比較的ドコにでも居る類のありふれた魔物 猫ほどの大きさの丸々とした毛玉で、よく見ると四本の突起が脚状に生えている 縞やブチ、三毛など猫っぽい柄の個体が多いが、体構造は菌糸類に近く あまりに単純な組成故に、焼却以外の攻撃に対してはサイズの割には意外なくらいにしぶとい 呼吸するように瘴気を吐き出す以外は何の攻撃手段も無く、装備を固めれば一般人にも駆除できるが 増殖力は凄まじい物があり、発見が遅れたが為に家屋敷を失う例は枚挙に暇が無い また、吐き出された瘴気が濃密になってくると、呼吸から身体が毒され生きながらリビングデッドになってしまったり 強烈な瘴気に惹かれて更に凶悪な魔物が集まって来たりする事があるので注意が必要である     ■学園マギア■ カージナル・テール 血染めになったような深紅の外骨格と鮮やかなグリーンの複眼が特徴の上級魔物 言葉は発さないがテレパシーのようなもので会話し人間の思考を読みとることもできる 人間ほどの大きさで額に一対の短い触覚が生えている 人型をしているが脊椎動物と節足動物双方の特徴を備えており身長より長い尻尾を有する 外骨格で覆われた尻尾の先端は槍の穂先のようになっており 戦闘時は鞭のように振り回すか槍のように突き刺して使用する その硬度、パワーは凄まじく最高クラスの防弾チョッキを貫通し人間数人を易々と持ち上げてしまう 左胸と下腹部の中央に金色のコアを持ち両方を破壊しないと倒すことができない 性格は極めて獰猛で常に飢えているような状態のため人間を見つけると確実に襲いかかってくる 下と左右に展開する口を有し獲物の息のあるうちから食べ始める