再現映像VTR    およそ一年前・・・その事件は起きた。  「大統領美人秘書誘拐事件」。  その事件を見事解決に導いた人物・・・  彼の名をレスリー・ガードナーは、レスリー・ガードナー。  われ等が合衆国大統領の身辺警護、SPである。  紙面では語られなかった彼の活躍と・・・ロマンスをお見せしよう。   秘書:ロマンスなんてありませんでした。    あったとすれば、今私はだれかと恋仲にあったのかもしれませんけど。 とまと:まぁまぁ。再現VTRなんてこんなもんですよ。     ちなみに私らも撮影には関与してないので、このVTRは初めて見るんですけどね。  事の発端はここ――夜中の大統領官邸前で起こる。 「・・・・・・・・・・・・。」  テロップ:「今日も本当に忙しかった! 明日も早いから、急いで帰らないといけないわ。  (以下テ)  大統領秘書なのに遅刻なんてできないもの!」  この物語の中心人物、彼女、キャサリン・リュー(27)。  ハーバード大学を好成績で卒業し、現在はジョナサン大統領の秘書を勤める才女だ。 トマオ:これは酷い・・・。 とまと:どうみてもアコーニトさんっていうか思いっきりヘルメット被ったままじゃん。     ケイトさんの何を再現したVTRだコレ。 トマオ:ていうかアコーニトさんは台詞を言ってないね・・・。 とまと:テロップ芸過ぎる。    大統領官邸前に待たせていたタクシーに乗り、帰路につくキャサリン。  激務の疲れもあり、うつらうつらとしていた。すると―― テ:・・・!?  クラクションと供にタクシーが停止し、彼女は目を覚ます。 「何してんだコラ! 轢くぞオイ!」  がなるタクシー運転手。  彼女が前方に視線を向けると、そこには黒服SPが二人立っていた。  二人はタクシーに近づくと、そのうちの一人が運転手に言っ・・・  ・・・言葉に詰まる。 「・・・・え〜っと・・・? ゴフッ」  隣のSPから脇腹に一撃を貰って呻くSP。 「おい、何するんだ紅花っ」 「お前バカあるか!? いきなり台詞忘れてんじゃないアルよ!!」  突如仲間割れする二人。 とまと:バカがおる。 秘書:バカですね。 「アコー・・・・・・キャサリンに用事アルよ。ドアを開けるアル」 「あぁ、あんたら官邸のSPさん? それにしてはエロいボディをスーツに隠してんな?ブホッ」 「くだらん事は言わなくていいネ!!」  運転手がドアのロックを外すと、さっき台詞を忘れていたSPが後部座席のドアを開ける。 テ:「どうしましたか?」 「急いでくれ! 緊急事態なんだ!」 「閣下が突然倒れられて病院に運ばれたアル。キャサリンは我々の車で病院まで運ぶアルよ。  だから早く降りるアル」 テ:「閣下が!? そんな・・・っ!」 「驚いている場合じゃない、急いでくれ!」  SPに急かされ、動揺しながらもタクシーから降りるキャサリン。  しかし、それが罠だと気付かされるまでに、長い時間はかからなかった。  運転手と話していたSPが銃を抜く。  パスン パスン 「いてっ!! いてぇっ!! おい、何撃ってんだよ!!」 「演技にはリアリティが必要アル。なのでちゃんとエアガンを用意していたアルよ」 ※人に向けて撃たないで下さい。 「モデルガンの方がリアリティあるだろうが! 大体、痛いだけなのに死ぬ演技に  リアリティが出るわきゃ・・・いてっ、いてぇっ!!」  容赦なく運転手に向けて銃の引き金を引くSP。 「うっさいね! さっさと死ぬアル! これはさっき触った分のおかえしね!!」 「おいっ、わかった、悪かっ、死んだ! 死んだっつーの!!」 「実銃で撃たなかった私の優しさに感謝するアル」  サイレンサー着きの拳銃で“静かに”殺される運転手。  住宅街だが辺りに人は歩いておらず、誰もこの事件の始まりに気がつく事はなかった。  キャサリンは運転手が殺された事に気付き、悲鳴をあげようとするが、 「いだだだだっ!! アコーニトさん、ここは俺が後ろから拳銃つきつけるシーンなの!!  反射的に手首捻るのやめてくれ!」  拳銃を突きつけた手首をキャサリンに返されていたSpは解放されると、 涙目で手首をさする。 「折れる所だっただろっ!?」 「だらしない男ね・・・私が代わるアルよ」  そう言うと、運転手を殺したSPが彼女に銃を向ける。 「ここで悲鳴を上げて私たちに殺されるもよし、黙って私たちについてくるもよし。  どうするアルか?」 「・・・・・・諦め(菖蒲の花言葉)」 テ:「・・・・・・わ、わかりました」  恐怖に震えながらも、それを悟られまいと平静を装うキャサリン。 「こっちだ。ついてきてくれ」  キャサリンは、しぶしぶ頷き、彼らに言われるがまま歩く。  彼女の背後では手首をさする男が銃をつきつけている。  少し離れた位置に停車されていた黒いバンに彼女は乗せられた。  バンの中は後部座席だけ取り除かれ、何もない。  キャサリンはそこへ押し込められると、拘束され 「あのね、アコーニトさん? 俺の腕をへし折ろうとするのやめてくれない?」 「本気で縛らないんだからちょっとの間我慢するアル」  拘束された。 とまと:ヘルメットの上から巻きつけられた猿轡がシュールだね。      トマオ:ヘルメットは意地でも脱がないんだね・・・。     というか・・・どうせ無意味なんだから猿轡はしないっていう選択肢はなかったのかな・・・  そこへ、通りの向こう側から偶然通りかかった一人の男がいた。  ・・・・偶然通りかかった一人の 「ちょっと待てって!着替えてる最中だっつーの!!」  いそいそと着替えを終えて、偶然通りかかった一人の男がいた。  彼は黒バンにキャサリンらしき人物が乗せられているのを 目撃していた。  彼こそが、この物語のヒーロー兼運転手、レスリー・ガードナーである。 とまと:ツッコみたい所があるんだけど。 トマオ:ぼくも。 秘書:・・・私もです。 大統領:どうして彼はマスクも被ってるんだ? とまと:ですよね。 トマオ:レスリーさんがこの時マスクをつけてたとか・・・? 秘書:彼はそんな物つけたりしません。 とまと:ですよね。  彼は今日非番で、夜の散歩を愉しんでいる最中だった。 「あれはキャサリン・・・? まさかな・・・けど、様子が変だったぜ」  彼にキャサリンの姿が見えたのは一瞬の事だった。  一緒に乗り込んだのはSP服だったし、何か用事でも出来て戻ったのだろうか、 と推測をつける。だが、すぐにそれが誤認だと気付く。 「おい、お前大丈夫か!」  彼は停車しているタクシーの傍に人が倒れている事に気がつくと、急いで駆け寄った。  そこに転がっていたのは運転手――― の制服を着せられているダッチワイフ(所有者・マスクドエロス)だった。 「しっかりしろ・・・! 俺の可愛い南極1号ちゃん! くそっ死んでやがるっ」  彼はその死体が官邸によくきていたお抱えのタクシー運転手だった事を思い出す。  やはり、あの黒バンに乗せられていたのはキャサリンで間違いないと確信した。 「・・・これだから女子供ってやつは苦手なんだっ!!」  レスリーはタクシーに乗り込むと、黒バンの後を追った。 ●コマーシャル  レストラン内、母と子が食事中の風景。  彼らの目の前には山盛りのサラダが並んでいる。  二人は骨と皮ばかりにやせこけている。  だが貧乏人といった風ではなく、身だしなみは整っており、上品な服を着ている。  良く見ると周囲の客も似た風であり、痩せていて、野菜を食べている。  壁には牛の絵に×印がかかれた絵が飾られている。 「ママ、ぼく野菜嫌い・・・お肉たべたいよ・・・」 「ダメよ! あんなものは汚らわしい獣だけが食べる物!  それに動物さんたちを殺すなんて原始人だけがする野蛮な行為!  現代の賢人のデイヴちゃんはヘルシィーで生き物に優しい野菜だ・け・を食べるのヨッ!!」 「でも・・・野菜ばかりはやだよ・・・」 「ノンノン! デイヴちゃんは野菜をしっかり食べて元気な子に育たなきゃだめなの!」 「わかったよママ・・・」  しぶしぶ食べ始めるデイヴ少年。 「ちょっとアナタ! 注文いいかしら?」  店員を捕まえる母親。 「注文をお願い」 「何が食いたいんだ?」 「ヘルシィー安全無農薬野菜盛りをもう一皿お願いするわ!」 「 だ が 断 る !!」  「なんですって!?」 「肉を食えっ!!」  母親が店員の顔を見あげる。  彼はリブロース・ウェルダンだった。  ウェルダンはドーン!と彼らの野菜の上にステーキを伸せる。   「やったー! おにく!」 「ダメよ!! 食べないでデイヴ! 私は野菜が欲しいのよ!! あなた何のつもりむぎゅ!!」 「いいから食えっ!!」  母親の口の中にステーキをつっこむ。 「君も遠慮するな!」 「むぎゅっ!!」  子供の口にもステーキをつっこむ。 「こ、こんな穢れたもの・・・・・・おおおおっはああーン!?」  痩せこけていた母親の体はどんどん肉が付き、セクシーに、胸が大きくなっていく。  ついには着ていた服が破裂し、何故か水着姿になり、官能的なポーズを取る。 「わ、わ、うわあああああーーっ!」  少年の身体もガタイがよくなってゆき、筋肉質になり、やはり服が弾けて海パン姿になり、 なぜかボディビルポーズを取る。 「す、すごいわ! お肉ってこんなに素晴らしいものだったのね!?」 「ママ、もっとお肉食べていい!?」 「勿論よ、どんどん食べなさい! 追加注文お願いするわ!  あなた、この素敵なステーキ・・・名前はなんていうのかしら!?」 「その名もマルステーキ! マルスタウンのステーキ専門店「マルステーキ」で食えるぞ!」  ウェルダンが店のマークがでかでかと描かれた宣伝チラシをつきつける。 「まぁ! すぐにいかなきゃ!!」  店を飛び出す母親。 「まってママ!ぼくも行くったら!!」  追って飛び出す息子。  一瞬静まる店内。  次の瞬間には他の客たちも一気に店を飛び出す。  その様子を満足そうに見えているウェルダン。  視点が変わり中心に映し出される壁にかかった牛に×印のついた絵。  リブロースがその上にマルステーキのチラシを勢い良くバーン!!と貼り付ける。 「ステーキ専門店「マルステーキ」は中央マルス通りのMUSCLE銀行曲がってすぐ!  ステーキ食べて君もマッスルだッ!!」 ●再開 「・・・・・・絶望・・・(ムスカリの花言葉)」 テ:(私・・・このままどうなってしまうの・・・?)  郊外で停車しているキャサリンを乗せたバン。  キャサリンはその中で両手足をくくられ、猿轡・・・?をされ、転がされている。  運転席側の助手席で、SPのうちの一人がノートPCを打っている。  その画面には、縛られたキャサリンを録画した動画が流れている。  もう一人は携帯で誰かに連絡をとっていた。 「順調アル。大統領秘書・キャサリン・リューの身柄を拘束しているヨ。  今、反抗予告に使う動画をそっちに送たネ。あとはそっちに任せたアル。それじゃな」  SPの格好をしていた一人・・・悪役Aは携帯電話を切ると、胸ポケットにしまった。  そのもう一人、悪役BはノートPCを閉じてダッシュボードに仕舞うと、隣を振り返った。 「大統領秘書を人質にとって身代金要求だなんて・・・ボスもなかなか凄い事考えるな」 「そうアル。数日後には身代金を受け取って南米でバカンスよ!」 「俺、ほんとにそんなに金があったらそうだなー、日本からNAR●TOのフィギュアとか 全部買っちゃうな」 「アタシはそうなー、アタシも日本行ってラーメンを北から南まで全部食べたいアルなー」 「いいじゃん、日本まで行かなくったって、ラーメン屋雇ってデリバリーすればさ」 「それもそうネー、でもやっぱり店で、並んで、カウンター席に座ってこう言いたいアル」 「何何?」 「麺カタめで!」 「何それ??」 「知らないアルか!? オマエはJapanのJの字も知らないみたいなもんヨ・・・」 「おいおい、俺もラーメンは好きだぜ? 良く食べてるし。ウズマキナ●トの大好物だもんな」 「それがわかってないアル! 日本で食べられるラーメンと、他の国で食べるラーメンは 全く別物! 特にこっち、アメリカで売ってるラーメン、あれは麺と汁が入った何かで、 日本のラーメンと比べたら月とミラクルマイクね。っていうかアタシからするとオートミールと 大差ないね。本場中国のラーメンもおかゆっぽいけど」 「げげっ、本当かよ。じゃあナ●トが食べてるのと俺の食べてるラーメンはそんなに 違うものだったのか? こりゃあ・・・一度日本にいかなきゃだめだな・・・。他に何かしたい事ある?」 「そうなー、パリにいってオシャレな服も沢山買いたいアル・・・あ、そろそろ時間ヨ」  悪役Aに言われて時計を確認する悪役B。 「あ、そうだな。ちょっと外でて煙草吸ってくる」 「はいな」  悪役Bは運転席から降りると、胸から煙草を出して咥える。  だが、火をつける仕草だけしてライターを仕舞った。  よくみると咥えているのはシガレットチョコだった。 「役柄上やってるけど・・・煙草の良さってのは俺にはわかんないな」  その背後から一人の男が近づいて―― 「オラァっ!!」 「ッっッッギャああああああああーーーあああああーーっ!!」  悪役B背後の股下からおもいっきり股間を捕まれて叫び声をあげ悶絶しながら辺りを転げまわる。 「ったく・・・つまらぬものを握っちまった・・・」  レスリーはポケットから出した手拭で手を念入りに拭く。  それを終えると、静かに首をへし折られた悶絶している悪役Bの死体に近づく。 「おま、手加減、なんで股間、後で忍術・・・」 「車の鍵、持ってねーのか? 車に挿しっぱか・・・」  レスリーは死体を一通り弄り、車のキーを持っていないこと確認すると、助手席に向かう。  彼には、そこに悪役Aがいる事がわかっていた。  気付かれないように、と注意しながら近づく。だが、 「動くなアル」 「・・・ちっ」  後頭部に拳銃をつきつけられ、レスリーは手をあげる。 「よくもやってくれたアルね。お前何者か?」 「ただのシークレットサービスだ」 「大統領関係者アルか・・・ここで殺しておくが得策ね」  悪役Aは引き金にかけた指に力を込める――― 「二度も喰らうかッ!!」 「なにっ!?」    パスン!  レスリーは挙げていた手を下げながら勢い良く振り返り、拳銃を持つ手を弾く。  銃弾はあらぬ方向へ発射された。  次の瞬間には相手と対峙し、左手で悪役Aの胸をわしづかみする。 「んにゃぁっ!!?」  一瞬悪役Aが怯む。  レスリーはすかさず身体を落とすと右腕を相手の股下に差込み、相手の腰を持ち上げて地面に勢いよく叩きつけた。 「んにゃはぁ〜〜?」  悪役Aはそのまま失神し、目を回した。 「さっきのお返しだ、この間にたっぷり揉んでおくか」  レスリーは悪役Aの胸に手を伸ばす。 「カッカッカッ! さっきのお返しだぜこのエロチャイナッ!」  悪役Aは胸をもまれているが意識を失っているために動かない。 「ごぶォッ」  レスリーの頬をジャングルブーツのドロップキックが捕らえる姿が一瞬だけ映し出される。  と同時にカメラが倒れ、地面だけが映されてスノーノイズがかかる。 「おいっ、エロマスク!! あたしの初監督作品をポルノにする気か!!」  暗転  心なしか頬が腫れあがっている(マスクをつけているのではっきりとわからない) 頬を擦りながら、レスリーは運転席の扉を開ける。 「んぐ・・・後部ドアのロック解除はこれか・・・? いつっ・・・」  レスリーがボタンを押すと、ガチャ、と音が鳴りバンの扉のロックが解除される。  彼がスイングドアをあけると、そこには身動きが取れない状態で転がされているキャサリンの姿。 「大丈夫か、きゃさ・・・いてて。口ん中切れてら・・・あの女、撮影が終った後揉んでやるからな・・・?」  レスリーはキャサリンの身体に手を伸ばす。 「ゴクリ・・・・・・一度触ってみたかったんだ・・・この魅惑の人妻乳・・・」 「・・・・・・・敵意・・・(トリカブトの花言葉)」 テ:「××××××××」  殺気を放つキャサリン。  出した手を勢い良く引っ込めたレスリーは尻餅をついてがたがたと震え上がった。 「ううううううそうそ冗談に決まってるじゃねーか! すぐ縄を解くぜ・・・」  レスリーが手を伸ばす間もなく、キャサリンはロープを引きちぎって立ち上がる。 「・・・・・・火の用心・・・・・・(イチハツの花言葉)」 テ:「レスリー!? あなたどうしてここへ!?」  キャサリンは後ずさりするレスリーを尻目にバンから降りる。 「あんたが車に乗せられるのを偶然見てたんだ・・・さぁ、戻るぜ。  そろそろ夜が明けっからな・・・勤務時間までに家まで戻らねぇと」  レスリーは怯えながらもその後を追い、バンから降りた。 テ「ありがとう、レスリー・・・私、あなたが来てくれなかったら今頃どうなっていたか・・・・!」  キャサリンはレスリーの胸に飛びつく様子もなく振り返りもせずに言った。 「なあに、散歩のついでだ」  とりあえず親指を立てて格好をつけてみせる。 テ「それじゃあ、戻りましょうか」 「そうだな」  レスリーは運転席に乗り込むと、助手席のドアを開けてキャサリンを中へ招く。  助手席に彼女がが座った事を確認すると、エンジンをかけた。  何気なしにキャサリンはダッシュボードを開け、悪役Bが使っていたノートPCを 発見する。そのまま起動ボタンを押す。 「・・・・・・閃き・・・・・・直感・・・・・・(金縷梅の花言葉)」 テ「ちょっとまって、レスリー」 「ん? なんだ?」  手を止め、助手席を振り返るレスリー。  キャサリンは顎に手をあて、考え事をしている。 テ「ヤツら、私を人質にとって身代金を要求するつもりだったみたい。  私を捕まえてる動画をどこかに転送した形跡があるわ」 「あんたは今ここで無事だ。そんな物、もう何の役に立たんだろ」 「・・・・・・・・・・・・・」 テ:「私は今無事。もしそれをやつらが知って、反抗予告をせずにこの事が終って しまったとしたら・・・もしかすると次は別の人をターゲットにするかもしれない。 もしそれが、ジョナサンのお嬢様だったりしたら?」 「それはない。令嬢にも、奥様にも、常にシークレットサービスがついてる。  そう簡単に誘拐される事はねぇ。それに、こいつらの身柄から他のヤツの事も何かわかるだろ」 「・・・・・・・・・・・・・・」 テ:「もしもの事が起きるのがこの世界でしょう?現に私も今誘拐されたのよ」 「じゃあどうする?」  レスリーは面倒臭そうに頬杖を付いた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」 テ「今、送信先から場所を割り当てるわ。私たちでそこに向かいましょう」  そういうと、キャサリンはノートPCのキーボードを高速で叩き始めた。 「場所だけ調べればいい話だろ。あとは連絡するだけで、俺たちが行く必要はない」  レスリーは当然の指摘をするが、キーボードを連打したままキャサリンは首を横に振った。 「・・・・・・・・・・・・・・・騎士道・・・・・・(トリカブトの花言葉)」 テ「特殊部隊が到着する前に逃げられでもしたら?  それに、やつらが自分達の間で独自に決めていた定時連絡とか、合図があったとすれば、  今それが途絶えている状態になってるのかもしれない。そうすれば、不振に思って逃げて  しまうでしょう。一刻を争うわ・・・場所、わかったわよ」  キャサリンはそう言うと、ノートパソコンの画面をレスリーに向ける。 「・・・・・・近くか・・・・・・」  住所を確認すると、レスリーは少し迷うフリをみせた。  その時、ピピピ、と背後――バンの後部側で倒れている悪役Aの携帯が鳴り響く。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 テ「どうするの? このまま携帯に出なければ、ヤツラは逃げる。再び犯罪を起こす可能性  を秘めてね。もし今出て対応すれば、未然に防げるかもしれない」  レスリーは参った、といわんばかりに頭をかく。 「そうだな、君の言うとおりにしよう」  言うが早いか、レスリーは車から降りて後部に入り、携帯電話に応答した。  そこから少し離れた場所に位置する港。  その中でも、端の方に位置する倉庫の中。  「ボス、あいつらこっちに向かってるそうアルよ・・・って、何アルか、その獅子舞みたいな格好」  詰まれたコンテナの上に座っているボス、と呼ばれた男は悪役C(悪役Aに似ていますが 別人です)の方を振り返って胸を張った。  普段とは違う忍者の衣装に、悪役Cの言うとおり獅子舞のようなヅラを被っている。 「クックック・・・これは俺の真の力を発揮するためのコスプレイ衣装の一つ・・・・自●也コス。  マスクドエロス・・・伝説の三忍の恐ろしさを見せてやるぞ・・・・」 「あちゃあ・・・完全にスイッチ入ってるネ・・・」  悪役Cは溜息をつく。が、すぐさまボスにも負けず劣らずの悪人笑いを浮かべる。 「次は見せ場ネ・・・少々演技に力が入って、思いっきり殴ってしまっても仕方ないアル・・・。  アタシの胸は安くないって、アイツの身体に教えこんでやるヨ・・・」  そういって拳を握り締めた。 「お〜い、まだアンタらはあいつらの存在に気付いてないんだからね。ちゃんと台詞お願い」  カメラの手前から激が飛ぶ。 「そうネ、ごめんアルよ。ついつい演技に熱が入ってしまったアル。ボス、犯行声明は出したヨ。  あとは指定の場所で金を受け取るだけアル」 「あとは・・・え〜っと・・・カホウ・・・ハ・・・ネテ・・・マタ、だな」  ドヤ顔で知ったか諺を吐くボス。 「おい、連れてきたぞ」  倉庫の鉄扉が叩かれ、ボスと悪役Cは身を乗り出す。 「噂をすればネテマタ、だな!」 「何か声が違う感じがするアルね?」 テ:「やめなさい! 気安く私に触らないで!」  キャサリンの声を聞き、本当に連れて着ていると勘違いした悪役Cは扉を開ける。 「騒がせるなアル。ちゃんと猿轡を・・・」  開いた扉の隙間から拳が飛ぶ。  悪役Cは手首を返してそれを受け流す。  しかし次の一撃―――黒く長い足が伸び、彼女を打つ。 「なっ!?」  そのすらりと長く美しい足は、キャサリンのものだった。  悪役Cはうろたえる。 「聞いてないアルよ、アコー・・・キャサリンは格闘に参加しないはずヨ!?」 「飽きたからどうしてもって聞かなくてよー・・・」  その後ろから姿を現すレスリー。  彼は二人の傍を抜けると、倉庫の中へ堂々と入ってきた。 「いや、丁度いいよ。俺が一人でぶっ飛ばすっ!!   エィーーーヤァーーッ!!!」  ボスはコンテナの上から大きく跳躍すると、レスリーに踊りかかる。  レスリーは身構える。  ボスは落下しつつ、相手に接触するギリギリで回転し、カカト落としを繰り出した。 「コンドルナイフッ!!」  高速のカカト落としを放つ。    ダンッ!!  レスリーは大きく回避せず、ただ半身を取る。  その真横をカカトが落下し、地面を叩いた。  辺りに散ばっていたがらくたや誇りがぶわっ、と舞った。   「ウィーーーー」  レスリーは一瞬っだけ鳥のようなポーズを取ると、突進する。 「シャイニング――」  着地中のボスの膝を踏みつけ、 「ウィザァァーードッ!」  勢いのある膝蹴りをボスの顔面にぶちこむ。  ボスはまともにそれを受け、レスリーの身体と供に後方に倒れこむ。  レスリー自身はその上を飛び越えてから着地、 「ヤーッ!!」  両腕を上げ、勝利のポーズを決める。  時間として数秒。 「ちっ・・・消えただと・・・」  レスリーが振り返った時にはボスは既にそこから姿を消していた。  周囲を見回す。 「逃げやがった・・・?」  そこまで呟いてから、自分の足元に、影がある事に気付く。 「上かっ!?」  レスリーは上を向く。 「遅いぜっ!!」    足を広げて落下してくるボスの姿。 「ムササビーッ――」    ボスはレスリーの肩に両脚を叩きつけると腿でその首を挟みこむ。 「シュタイ――」 「させるかッ!!」  レスリーは強引にその脚を掴む。 「何っ――」  二人の力は拮抗しあってどちらも技を発動させられないまま、力学に従って 地面に互いに叩きつけられ、縺れ合いながら転がる。  互いに距離を取り合いながら、受身を取って起き上がり再び退治する。 「やるじゃねーか・・・オモシロニンジャ」 「そっちこそ・・・エロ仮面!」 「折角面白くなってきたわけだが、次で決めてやるよ」 「監督がさっきから何か怒ってるからね。俺もその方がいいと思う」  二人の間に冷たい風が吹き込む。  互いに機を窺っていた。  数秒の沈黙の後、先に動いたのはボスだった。 「先ッ――」  ボスはまるで掻き消えるように、その姿を眩ます。 「目の前で消えるなんてありえねぇッ――なっ!?」  次の瞬間、腰を握ってレスリーの前に出現しする。 「おりゃあああああああああああああああああああああッ!」 「ががががががぁ――」  目にも留まらぬ速さで打ち込まれる拳撃と蹴撃の連打。  レスリーはそれを受け続ける。   「BーOーーーNーーーー!」  連打を続けた後、脚を引いて一瞬だけ力を込める。 「SAIッ!!」  放たれた強力な回し蹴りが、レスリーの胸板を貫く。   「ぐ・・・はっ・・・」  苦しげに上体を反らす。 「・・・・・・何っ!?」 「なかなか今のは効いたぜ・・・ッ!」  レスリーは歯を食いしばり、反らした上体を起こしてくる。  胸にはくっきりと、ボスの放った回し蹴りの足跡がついており、煙を上げている。 「次は、俺の番だなぁッ!?」  身体を乗り出し、ボスの左サイドに移動すると、脚を引っ掛けて相手の外側の腕を掴むと 空いた左足を振り上げ、頭を膝裏で挟み込み、卍堅めを決める。 「がっっっっ」 「まだまだだぜッ」  脚に力を込めてダメージを与えたのち、相手の足に絡めた右足を器用に外すと 相手の体上で踊るようにぐるりと身体を回転させ、外側から相手の胸側に脚をひっかけ、 そのまま地面に引き倒す。  見事に逆十字固めを決めていた。 「腕がッ――」 「耐えて見せろよゥッ!」  そしてまた決めていた十字固めを外すと、ぐったりしたボスの身体を掴んで上空へ放り投げる。 「今日は特別のカーニバルだッ!!」  レスリーは飛びあがると、ボスの両足を掴み、天地を逆さまにしてしっかり捕らえる。 「エロス!」  そしてがら空きの股間を踏みつけ、そのまま地面に叩きつける。 「ドライバーッ!!」 「うがッ――――!」  ドォンッ!  ボスは頭から地面に叩きつけられ、まるで大砲が放たれたかのような音が鳴り響いた。  レスリーはボスの体の上からバク転して着地する。 「ぐ・・・がっ・・・」  ボスの身体は力なく地面に伏せる。  意識が朦朧としているらしく、立ち上がる事はできなかった。  レスリーは両手をあげ、静かに勝利のポーズを取る。 テ:「レスリー! 大丈夫っ!?」  キャサリンがレスリーに駆け寄る。  レスリーが振り返ると、向こう側で悪役Cが地面に伏していた。 「まぁ・・・な・・・しかし効いたぜ・・・っと・・・!」  レスリーは足元をふらつかせ、キャサリンの方へ倒れこんだ。  反射的に手を伸ばす。  ふにゅん  見事にキャサリンの両胸を鷲掴みにしていた。 「たは・・・・・・」  恐る恐る顔を上げる。 「・・・・・・・・・・・・」  ヘルメットをかぶっている彼女の表情を読み取ることはできない。  だが、彼女が何をしようと考えているのかはわかった。 「ちょ、待ってくれ、これは事故で・・・」   と言いつつ手をわしわし動かしてしまうのは彼の性であった。 「・・・・・・・・・・危険な愛・・・(夾竹桃の花言葉)」 テ:「××××××××」 「命だけはおたsボグェ」   暗転  港。  夕日をバックにレスリーの死体が転がっている。  その体の上には、トリカブトの花が載っていた。  〜 FIN 〜 とまと:レスリーさんって最後死んだんですね。 秘書:そんなわけないでしょう!!今もしっかり生きてます! とまと:じゃあ、秘書さんのおっぱいは揉んだの? 秘書:彼がそんな事するはずないでしょう!    一体何ですかこれは!? とまと:ラブ・・・ロマンス・・・? 秘書:全然違います。学生でもこんな酷い物を録ったりしないでしょう。 とまと:でも、秘書さんが誘拐されて、レスリーさんがそれを助けて、     二人で誘拐犯のアジトを見つけて、ボコったのは間違いないんでしょ? 秘書:凡そはそうです。でも私は一切戦ってません。    最後の倉庫のシーン。ありましたよね。レスリーは単独ではなく、到着した    特殊部隊の方々と一緒に乗り込んだとの事ですし、ほぼ銃撃戦だったみたいですよ。    とは言っても、相手の武装も人数もそれほどではなかったらしく、すぐに鎮圧された・・・    と聞いています。 とまと:聞いています・・・? 秘書:そう。私はあの場にはいなかった、という事です。後から聞いた話で知ってはいますが。 とまと:どうしてこうなった再現VTR。まぁ、ノンフィクション映画なんて大体こんなもんか。     そういえば秘書さんはハッカーなんですか? 秘書:いいえ。確かに私はあの時、柄にもなく、残りの犯人も捕まえに行きましょう、    とはレスリーに進言しました。ですが、他の事は彼が特殊部隊の方と連絡を取り合って    総てお膳立てくれました。私はどきどきしながらその様子をじっと見ていたに過ぎません。 とまと:でーーーどきどきしちゃったわけですねーーーー。 秘書:・・・・・・そういう事にしておきます。 とまと:まぁ、ラストシーンは別々だったとしても、それまでの一緒にいた間でなんか、     なかったんですか。面白い事。 秘書:面白い事なんてありません。 とまと:レスリーさんがこうかっこよかったとか、ああしてくれたとか。 秘書:・・・・・・一つだけ・・・・・・。 とまと:ほう。 秘書:やっぱりやめておきます。 とまと:そこまで言ってやめるとかナシですよ!     でないとトマくんが秘書さんのおっぱい揉みますよ!! トマオ:揉まないよっ!! とまと:遠慮すんないっとけ!! トマオ;いくかっ!! 秘書:・・・はぁ・・・そうですね、言います。 とまと:ひゃっほー! 秘書:私は拘束されていた時、意識を失っていたんですが・・・ とまと:はい。 秘書:拘束を解かれながら意識が戻っていく時に、朧げながらに、声が聞こえたんです。 とまと:なんて? 秘書:・・・『これだから、女子供は』、って。 とまと:それが・・・? 秘書:とても暖かくて、優しい声だったんです。 とまと:それでずきゅーん、ときたわけですか。 秘書:・・・これは私の想像・・・いえ、妄想、空想の類の話ですが、    彼は私以外にも影で誰かを助けたりしているのではないか・・・そんな風に思ったんです。 とまと:ヒーローですね。 秘書:ええ。 とまと:はっきり言っちゃう所もいいですね。 秘書:これ以上隠しても無意味ですからね。       ・・・これで満足ですか? とまと:最後にもひとつ。 秘書:どうぞ? とまと:その後、なんにもないんですか? ホントに? 秘書:ありません。本当に。そのまま時間を刻んでいます。 とまと:つみつくりなおとこですねぇ。     お二人の関係に進展が訪れますように、お祈りしてこのコーナーを締めましょう。