[オペレーター]「ノヴェンバーU」 の居住区域で前哨部隊が回収したオーディオログが、 データベースにアップロードされました。 未分類ですが、有用な情報が含まれている可能性があります。 移動中、データ端末で可能な限り内容を確認しておいてください。 【データベース接続中……オンライン】 【検索:ノヴェンバーU オーディオログ 最新】 【96件……オーディオログを再生しますか?】 【ソート:録音日時(古い順)……再生開始】 [J・ワトキンソン:作業員]今日もまた「ドブさらい」をさせられた。 この星のクソッタレな海藻は、あっという間に成長して基地の排気口や排水口を塞ぎやがる。 FAで海藻を焼いたり、薬をまいてるだけで一日が終わっちまった。 身体中が強張って、あちこち痛くてたまらない。 バウマンやヤンソンは二週間に一回しかドブさらいの当番がまわって来ないのに、俺はもう 今週だけで二度目だ。 どうやらイシムラのやつに嫌われているらしい。 けど五年は我慢するしかない。仕事を放り出してホームに帰ろうと思ったら、違約金と旅費 だけで破産しちまう。 望みは薄いが、配置転換の要望書を出しておこう。 さもなきゃ、この星のベムどもがイシムラをランチにしてくれるのを祈るまでだ。 【スキップ】 [C・リンドブロム:研究員]イグナートが、エイプリルUから戻る途中に巨大な先住生物を見たらしい。 目測で全長が50メートルはあったとか……。 予備調査では、この星には小型の生物しかいなかったはずなのに! テラフォーミングの影響で大型化しているというが、本当だろうか? いくらなんでも大型化のスピードが速すぎる。 施設の耐久度には充分な冗長性があるはずだけど、50メートルもある生物に襲われることは 想定していないだろう。 ここに来る前、ホームのビデオショーで環境学者が言っていた。 「5th-βほど多様な生物相をもつ惑星の環境を劇的に変えようとすれば、予想もつかない しっぺ返しをくらうことになるだろう」と。 エコマニアのお題目だと聞き流していたけれど、もしかすると、彼の言うことが 正しかったのかもしれない。 【スキップ】 [A・ルカス:作業員]クソッ、ワトキンソンの野郎! (荒い息)……グリーンルームの使用権を、一回キャンセルされた。服務規程違反だとよ。 バカバカしい! このノヴェンバーUのゲートに、隔壁がいくつあると思ってるんだ? 十二層だぞ! 隔壁を一つを開けて移動した後は、必ずそれを閉めてから次の隔壁を開けること? ハッ! そんなことをやってたら、外に出るだけで一時間以上かかっちまう。 効率だの能率だの口やかましいくせに、そっちの方がよっぽど時間の無駄だろうが。 自分がイシムラににらまれてるからって、八つ当たりしやがって! ……クソッ、どうしてこんな星に来ちまったんだ。 基地内の空気にまで、あの気色悪い藻の生臭い匂いがこもってやがる。 どんなに消毒しても、フィルターを通しても消えやしない。 これだったら、油臭い宇宙船の空気の方がまだマシだったぜ。 【スキップ】 [W・ダレッサンドロ:保安員]研究員のリンドブロム博士が、作業中に死亡した。 虫のような先住生物の群れに襲われたらしい。 死体は一部しか回収できなかった。 作業員たちは非常に動揺している。 当然だろう。契約に、先住生物に襲われる危険については触れられていなかった。 自分も同じだ。こんなことになるとは聞いていない。 装備の増強と、危険手当の増額がなければサボタージュも辞さないつもりだ。 【スキップ】 [T・イシムラ:所長]ようやく要望が通り、バトルスーツをまわしてもらえるようになった。 最近は、外での作業をあからさまに避ける者が多かったが、これで作業員たちも少しは 安心するだろう。 引き続き、デモリションドレスの配備を要望するつもりだ。 上は事態の深刻さがわかっているのだろうか? ノヴェンバーUだけのことではない。生産ラインを組み替えてでも、兵器を増産すべきだ。 これ以上、作業計画を遅らせるわけにはいかない。 【スキップ】 [J・ワトキンソン:作業員]なんてこった、畜生! くそったれのベムどもが、基地内に侵入しやがった! ルカスの馬鹿野郎、隔壁は一枚ずつ開けろと何度も言ったのに! 聞こえてるか? ベムは何十匹も入っていった。はじめて見るヤツだ。 大きさはたいしたことはない。FAよりも小さいぐらいだ。 だが腕が二本あって……その腕で、隔壁の開閉装置を操作しやがった。 どこかで俺たちの作業を見ていたのか? だとしたら、今まで見たベムどもの中じゃ、一番頭のいいやつなのは間違いない。 俺は今FAの中にいる。ここにいればひとまずは安全だろう。 だが中の連中は……。 聞こえているか? 保安チームはすぐに対応してくれ! [L・チャペック:研究員]神よわたしは災いをおそれません。神よわたしは災いをおそれません。 神よわたしは災いをおそれません。神よわたしは災いをおそれません。 神よわたしは災いをおそれません。神よ―― [T・イシムラ:所長]現在地は地下四層のシェルター。シェルター内にいる生存者は12名。 なんとかここを確保して、救援を待つつもりだ。 どうしてこんなことになったのか……おい、何をしている!? ([女の声]ウイルがまだ外にいるのよ!) 馬鹿者、開けるな! 止めろ、止めるん――(ノイズ) (ものが壊れる音、悲鳴、怒号) 【一時停止(割り込み)】 【!注意! 目的地到着まで10分です】 【再生停止】 【データベース切断中……オフライン】 【戦術リンク接続中……オンライン】 【スリープモードに移行】 【スリープモード】 【END】 (※本作は海兵隊が到着する前、5th-βで先住生物が人間たちを襲いはじめた時期を想定しています)