アバン [全校集会・体育館] ざわつく全校生徒達。 校長が壇上でマイクをハウリングさせながら話をしている。 教頭「明日に迫っているゴールデンウィークですが、皆さんは学生な身の上、あまりハメを外さず」 ほとんどの生徒達は話を聞いていない。 モブA子「ねえ、聞いた聞いた?」 モブB子「なになに?」 モブA子「出るんだってさ!」 モブC子「出るって何が?」 モブA子「新校舎!」 モブC子「B号棟?」 モブB子「だからぁ出るって何が」 モブC子「もしかして…幽霊とか?」 モブA子「そうそう! 夜な夜な声がするんだって! たしか…」 私語に勤しむ生徒達を教師が一喝する。 教師「そこ五月蝿いぞ!」 教頭「あー、また学校全体で取り組んでいた環境活動が認められISO14001の認証を受ける事になったのはわが校の誇りであり」 そんな中、須加が突然、お腹を抑えてふらふらする。 モブD子「ちょ、ちょっと! 須加さんどうしたの!?」 須加「気、気にしないでくださいまし。ちょっと貧血気味なだけですわ…」 顔面蒼白の須加を横目で見ている普。 普「6日と16時間と25分…」 モブD「本当に大丈夫!?」 須加「あ、さわらないでくださいまし…きゃっ///」 ものすごい音とともに爆発する臭気。 須加、ヘブン状態。 須加「あー、してしまいましたわ。うーん、一週間が限度ですわね」 鼻を抑えるモブD子。 モブD子「くっさっ!!!」 須加「ふふふこれこそ生命の匂い。生きとし生けるものの生命活動の果て。代謝の先にあるフロンティア…つまり、排泄」 モブD子「も、もしかして須加さん…」 須加「流石に貯めまくった甲斐がありますわ。天に召されるかと思いましたわ」 ゆっくりと目を背ける普。 普「……」 ものすごく良い笑顔で、 須加「スカッとさわやかですわ♪」 タイトル スカトロ探偵・須加 好子 サブタイ『何事も初めが肝心なわけでふんばらなきゃ出るものも出ないんだからとふんばってみた結果に屁しか出ないというのはよくあることですよね、人、それを空回りと言う』 [放課後・A号棟保健室] 保健医「…で、一週間近くウンコを我慢してて思わず漏らしちゃったと…」 須加「わたくしとしたことが、気が緩んでしまいましたわ。あと、括約筋も」 保健医、眉間をつまみ険しい表情。 保健医「まあ、良いんですけどね。ウンコを漏らす学生がいないわけはないので。ただ、私が疑問なのは…」 茶色く染まっているオムツがビニール袋に入ってる。 保健医「なんでオムツまで履いて前準備完璧だったのかしらね!」 須加「それはプレイの一環ですから仕方のないことですわ」 保健医「ああもう貴女って子は…」 須加「自分の意思が通じずお通じしちゃうのが理想なので限界を越えて我慢してた訳ですけど流石に量が量なので少しビビりましたわちょっと切れましたし次は安全にも注意を払って浣腸か下剤プレイにしておこうかと思ってまして…」 保健医「早く教室に戻りなさい!!」 須加「…あっ、オムツは持って帰っても宜しいですか?」 保健医「出ぇていけえ!!!」 [放課後・A号棟教室] モブD子「能丸さん、ちょっと話いい?」 普「…なに?」 どんっと机を叩きつけるモブD子。 モブD子「須加さんの事よ! あなた幼なじみなんでしょう!? なんとかしてよ!」 普、頬杖をついて視線をそらす。 普「なんとかって…」 モブE子「そ、そうよ! す、すかとろ趣味って言うの? 辞めさせてよ!」 普「あたしには関係ないし」 モブD子「関係ないわけ無いじゃない! あの子のせいで私たちがどれだけ迷惑してるか」 モブE子「そ、そうだよ〜。彼女のせいで私たちまで他のクラスの子に、う、うんこうーまん扱いされたら…」 モブD子「たまったもんじゃないわよ!!」 普「はあ…」 [放課後・A号棟廊下] オムツと汚物の入ったビニール袋を振り回しながら、スキップする好子。 須加「おやつ代が浮きましたわー♪」 モブD子「ちょっとひとの話聞いてるの!?」 須加「ん? なにやら騒がしいですわね」 [放課後・A号棟教室] 教室の扉が勢いよく開かれる。 須加、元気よくもろ手を挙げる。 須加「おはよーございます! 皆々様、今日もスカッとさわやかな天気ですわね!」 静まり返る教室。 須加「…って、あれどうしましたの? 皆々様おつゆじゃなくてお通夜ムードで」 普、立ち上がる。 普「…そろそろ時間だから」 モブD子「待ちなさいよ! 話はまだ終わってない!」 普、早足で教室を出ようとする。 須加「どうしましたの、ぷろしあ?」 須加、普に手を伸ばそうとするが払いのけられる。 普「触らないで!!」 須加「ぷろしあ…?」 ガシャン、と教室の扉を強く閉める。 静まり返る教室。 須加、悲しみの表情を浮かべる。 須加「…ちゃんと手は洗いましたのに…」 モブA男「そういうことじゃねえよ」 モブB男「そんなことよりその汚物を捨ててこい」 [昼休み・B号棟トイレ] 普、息を切らして駆け込む。 腕時計を見る。 学生手帳をポケットから取り出して、『トイレ』と付箋が貼られた箇所をめくる。大量に数字と記号が書き込まれてる。 普「時間通り…間に合った…」 普「好子のせいで散々な目にあった…」 普(独白)「須加 好子とあたしは幼なじみだ」 [回想・公園] 普(独白)「隣近所だったあたし達は毎日二人で過ごしていて、とても仲が良かった。好子がスカ趣味に目覚めるまでは」 普、笑顔で公園のブランコをこいでいる。 砂場でうずくまっている須加。 須加のそばに駆け寄る普。 普「なにみてるのー? よしこちゃん?」 須加、真剣な表情で振り返って 須加「うんこですわ」 好子、木の枝で何かのうんこをつつく。 普「い、犬の糞?」 須加「…どうでしょう? 犬の糞とは違う気もしますわ。あ、コーン」 普「や、やめなよーばっちぃよぉー」 須加「ばっちぃ? うん。たしかにばっちぃですわ。でも、なんか気になりません?」 普「気になるって?」 好子、胸に手をあてる。 須加「なんというかこう、心がひかれるというか、自分のお腹の中にもこれが入ってるんだなあと思うと…」 普「?」 須加「すごく興奮しますわ!」 普「…」 普(独白)「思い出してみたら昔からあまり変わってない」 普(独白)「特殊性癖なんかと仲良く出来るわけもなく気がつけば疎遠になり、あたしは好子を避けるようになっていった」 普(独白)「"仲間"だと思われるのが嫌だったからだ。大体、うんこだのなんだの汚物に興味があるなんて最低最低最低! 信じらんない! 考えられない!」 トイレの扉の前に立ち、腕時計を見る普。 普「5…4…3…2…1…」 普(独白)「それからあたしは極力普通にしようと努力した。あたしは好子なんかと違うってことを皆に知ってもらうために。この髪型だって中学生の平均的な髪型だし、スカートの長さもこの学校の女子生徒の平均値だ。テストは前結果から予測した平均点を取るよう心がけてるし、登下校時刻もその所要時間も平均的時間になるような場所に引っ越しした。そして、特に気をつけてるのはこのトイレの時間と回数だ。好子と同じ趣味だと思われないよう細心の注意を払いリサーチを行い、まるで株価の変動幅を予測するように日々の平均的トイレ時間を算出し、それを行っている。この扉を平均的な力で押し開けて、そして、平均的食事から生まれた平均的排泄物を平均的時間で排泄し平均的長さに切り取った平均的価格のトイレットペーパーを平均的に折り畳み平均的な角度から平均的な回数拭いて平均的水量で流すのよ…ふふ、ふふふ完璧だわ。まさにパーフェクト。パーフェクトに平凡で普通なあたし。こんなあたしが特殊性癖な訳があるわけない。みんな見て! あたしはこんなにも普通! 普通なんだから!!」 個室のドアを開けると流し忘れた大盛りうんこが便器に鎮座している。 普「oh...NAGASHI-WASURE…」 普「ったく最低だわ。ちゃんと流しなさいよね…」 レバーに手を掛けるが水が流れない。 普「あれ? 水が流れない」 隣の個室を開けるとそこにも大盛りうんこ。 普「…っ」 次々と個室を確認するが全ての個室に大盛りうんこが鎮座している。 普「って、ここも! ここも! ここも! 全部流し忘れじゃない! いったいどうなってるの!?」 腕時計を見て焦りの表情を浮かべる。 普「落ち着け…落ち着くのよぷろしあ…ここは不本意だが二番目に平均的な所用トイレに駆け込めばギリ間に合う…!」 勢いよく踵を返し走り出す普。 別のトイレに駆け込むがやはりそこにも大量のうんこ。 普「ここも!?」 幾つもトイレを確認するがやはり大量のうんこ。 普「どうなってるの!? 祭り!? 何かのフェスティバルなの!?」 焦りながら手帳を確認する普。 普「つ、次! 次に平均的なトイレは…!?」 モブF子「キャー!!」 校舎のいたるところから悲鳴。 流し忘れうんこに気づいた生徒たちがぞくぞくとトイレ前に駆けつける。 普、まだ手帳とにらめっこしている。 普「A号棟三階トイレ…」 普、歩みだした瞬間、モブ男子に肩を掴まれる。 普「え、なにっ」 モブC男「お前だろ! このうんこの流し忘れの犯人!!」 普「へ?」 モブD男「そうだ! さっきトイレから出てくる所見たぞ!」 モブF子「あたしもさっき別のトイレから出てくる所見たわ!」 モブE男「私も違うトイレから出てくる所見たわ!」 モブF男「男子トイレにもうんこがあったぞどういうことだよ!?」 普「ちがっ…あたしじゃない」 モブC男「色んな奴がお前を目撃してるんだ! 言い逃れできないぞ!」 普「だから、あたしじゃない!!」 モブF子「じゃあなんで色んなトイレに出入りしてるのよ!」 普「そ、それは…」 モブE男「そういえばこの子…あの須加とかいう子の友達じゃない!」 モブF子「そうなの!?」 モブC男「ますます怪しいな…!!」 普「だから、あたしは!!」 須加「ぷろしあは犯人じゃありませんわ」 普のスカートの中に顔を突っ込んでいる須加、それに気づいた普は叫び声をあげる。 普「なっなにすんのよ!!!////」 顔を真っ赤にしてスカートを押さえる普。 モブA男「犬かお前は」 須加「芳醇な薫りに誘われて来てみればとんだ騒ぎですわね! 祭!? 何かのフェスティバルかしら!? マーベラスですわ!!」 モブC男「ちげえよ!! てめえのダチがいたるところでうんこを置き去りにしてんだよ!! 責任取って処分しろよ!!」 普「だからあたしじゃない!!」 須加「ちょ、やめ、こんなたくさん無理ですわ///」 モブA男「ちょっと喜んでんじゃねえよ」 須加「まあとにかく落ち着いてくださいまし」 須加、人差し指を立てる。 須加「とにかく、この流し忘れの犯人は普じゃないですわ」 モブD男「なんでそんなことが言えるんだ、大体、ついさっきトイレから出てくるのは見てるんだぞ」 須加「理由は3つ。まず一つは…先程トイレを確認したところ妙な事がありましたわ」 モブD男「妙な事…?」 須加「トイレットペーパーがどの便器にも無かったのですわ」 モブD男「???」 モブA男「つまり犯人は…」 須加「ええ。犯人はお尻を拭いていない!」 モブC男「きったねっ」 普にモブ達の視線が集中する。 普「あたしじゃないんだってば!!」 須加「ええ、そうですわ。先程、ぷろしあのお尻に顔を突っ込んだ時にそれは確認出来ましたわ。もし、お尻を拭いてなかったらあたしは…あたしは!!」 モブA男「興奮してんじゃねえよ」 須加「無論、大量のうんこをしたと思われるような匂いではありませんでしたわ。嘘だと思うなら自分で確認してくださいまし」 普「確認させるな!!///」 モブD男「何処かで拭いたのかもしれないだろ!」 須加「あら? さっき自分でトイレから出てきたばかりのぷろしあを見たんじゃなくて?」 モブD男「くっ…」 須加「理由、その2。あのうんこはぷろしあのものではありませんわ。…ぷろしあのうんこは! 規則正しい平均的な食生活から生まれるバナナ型のライトブラウンの素敵な一本糞! 今、トイレにあるようなグチャグチャ下痢便ではないのですわ! ほら見てくださいましこのぷろしあうんこの写真を!!」 何処からともなく普のうんこの写真を取り出す須加。普、慌てて写真を奪おうとするが須加にかわされる。 普「や、やめろおおおおおおおお!!//////」 モブA男「どこからツッコんでいいかわからなくなってきた…」 須加「そして、理由、その3。…どう考えても人間一人のする量じゃないですわこれ…」 モブA男「正論過ぎる…」 廊下にへたりこむ普。 普「も、もうやだ…犯人扱いの方がよっぽどましだったわ…」 須加「以上をもって、ぷろしあは犯人ではないことが証明出来たはず。Q.E.D.…キュートでE感じの大便…」 モブA男「とりあえず黙れ」 モブC男「だけど、色んな奴が見てるんだよ、そいつが流し忘れのあったトイレから出てくるところをな」 普「だからそれは…」 モブF子「それに今日だけじゃなく毎日色んなトイレでこそこそしてる事も知ってるんだから!」 普(独白)「り、リサーチがバレてたー!?」 須加「ぷろしあは嘘をつくような子ではありませんわ」 モブF子「なんでそんなこと言えるのよ!」 須加「大切な友人だからですわ」 普「好子…」 須加「友達を信じて何が悪い!!」 普(独白)「元はと言えばあんたのせいなんだけど…」 須加の真っ直ぐな瞳を見つめる普。 普(独白)「大切な友人、か…」 普の視線に気づいて微笑み返す須加。 普(独白)「ま、悪い気はしないかな…」 モブC男「じゃあ犯人は一体誰だって言うんだよ!!」 須加「そんなの私が知ったこっちゃないですわ。ただ…」 ビシッと指をさす好子。 須加「私の大切な友人を陥れようとしたのは万死に値する! この私が真犯人を必ず捕まえて見せますわ!!」 普「好子…」 須加「このぷろしあと一緒に!!」 普「へ?」 須加「このぷろしあと一緒に!!」 モブA男「二回言った」 モブD男「二回言ったな」 モブE男「二回言ったわね」 普「ええええええええええええええええ!!!???」 校舎にこだまする普の叫び声。 [放課後・プール] 水泳部員Aが絶叫して尻餅をつく。 水泳部員B「おいおい、どうしたんだ?」 水泳部員A「あ、あれ…」 震える指先が指し示す方向に、水死体―切断された人間の右腕と頭部―が浮いている。 水泳部員B「う、うわあああああああああ!!?」 [放課後・生徒会室] ゆまり、高級そうな鞄を漁っている。 ゆまり「あら? あらあら?」 ゆまり「…才蔵」 天板が開き才蔵が顔を出し、床へと降り立つ。 才蔵「ここに」 ゆまり「どうやら生徒手帳を落としたみたい。探してきてくれるかしら」 才蔵「御意でござる」 ゆまり「5分以内」 才蔵「はっ」 ゆまり「一秒でも遅れたら尿道に業務用コンプレッサー刺して大量の空気で金玉を破裂させる」 才蔵「殺生すぎるでござる!?」 ゆまり「はい、いーち、にー、さーん…」 才蔵「ヒイッ」 才蔵、素早い動きで生徒会室を飛び出していく。 ゆまり「もし誰かに知られたら…ちょっと面倒な事になるわね…」 ゆまり「まあ、その時は…ふふ」 ゆまり、邪悪な笑みを浮かべる。 [放課後・廊下] 楽しそうにスキップする好子と肩を落として歩く普。 普「…とんでもないことになってしまった…」 須加「さてさてスカッと犯人を捕まえて、ぷろしあをスカに目覚めさせますわよ」 普「ちょっと待って今聞き捨てならない言葉が…」 須加「さーあ! ふんばりますわよー!!」 普「ちょっと好子!!」 物陰で二人を見つめる少女。 黄金井「ふふふ。」 口に手を当てて笑みを隠す。 黄金井「…好奇心は猫をも殺すわよ…須加好子ちゃん…」 『file.01 連続うんこ流し忘れ事件with雲国中学校殺人事件』 つづく